野崎幸助さんの不自然な死 不審な点があり解剖された遺体【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】

【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】#73

救急隊員が自宅に来てからも早貴被告が旦那=野崎幸助さんの体に触ることはなかった。いや、なかったのではなくて、しなかったという表現のほうが正しいような気がした。救急隊員は彼の蘇生ができないことを悟り警察にバトンタッチし、警察は死に不審な点があるからと解剖を了解する署名を早貴被告に書かせたという。

■午前2時まで事情聴取

どうやら警察も遺体が不自然であることに気が付いた。だから午前2時まで、早貴被告と大下さんは事情を聴かれていたのだ。

「あのね、マコやんと大下さんとも話をしたんだけどキミがアプリコの社長となって仕事は継続したほうがいいと思うよ。キミは仕事をしなくていいし、東京で暮らしていいけど、毎月毎月給与は振り込まれる。これが一番いい方法ではないかな」

「ワシもそう思うで。早貴ちゃん遊んで暮らせて給料が振り込まれるんだからいいじゃないか。事業をやめてしもうたらお金は入ってこなくなるから長い目で見ればそれが最善な方法ではないかな」

マコやんがフォローをした。

「アプリコは赤字で、オレのポケットマネーで赤字を埋めてやっているんだから、いつでもやめていいんだ」

常日頃ドン・ファンはそのように言っていたが、かなりのウソがまじっていることはうすうす分かっていた。利にさとい彼が赤字会社を運営することなどあり得ず、貸金業も国に利率を下げられた瞬間にやめてしまったのだから、機を見るに敏な彼が慈善事業をするワケがないのだ。

早貴被告はそのようなことを理解している様子もなく、ただただコックリとうなずいているだけだった。

「あのな、これは事件だからキミたちは疑われるかもしれないよ」

死後硬直の謎をしゃべり早貴被告と大下さんに宣言すると、2人はギョッとした表情を浮かべた。

「お久しぶりです」

夕方4時からは自宅に葬儀屋さんがやってきて打ち合わせがあるので、その前にアプリコに行くとドン・ファンの知人で弁護士事務所の事務員をしている60代後半のMが来ていた。1カ月前の4月13日、ドン・ファンの喜寿の誕生日に六本木のホテルで会って以来である。

Mは製薬会社の営業マンだったが、ドン・ファンに拾われて会社を手伝うことになった。しかし長続きすることもなく、その後は都内の弁護士事務所に雇われて、今も別の四谷の法律事務所で事務員として働いている。鼻の下にちょびひげを生やし、ドン・ファンの前ではおとなしいが、いないと自慢話ばかりする鼻持ちならないヤツだった。

「しかし、オヤジがぽっくりと逝くなんてなあ」

社長と親しいことを誇示するように「オヤジ」と人前では呼ぶが、ドン・ファンの前では社長と呼んでいた。(つづく)

(吉田隆/記者、ジャーナリスト)