真冬の長野で多くの若者が犠牲になったスキーツアーバスの転落事故から5年9か月。運行を管理する側の過失を問う裁判が21日、長野地裁で始まった。業務上過失致死傷罪で在宅起訴された運行会社「イーエスピー」の社長高橋美作(60)、運行管理者だった荒井強(53)の両被告はそろって起訴事実を否認した。なぜ事故を防げなかったのか。被害者の遺族は真相の解明を願う。
午前10時30分過ぎ、両被告は黒色のスーツ姿で法廷に入った。
罪状認否で高橋被告は手元のメモを読み上げながら、「事故で尊い命を失われた皆さまのご
冥福
(めいふく) を心よりお祈り申し上げる」と遺族らに謝罪。一方で、両被告は「運転手がフットブレーキを使用せずに運転するとは予想できなかった」などと述べ、無罪を主張した。
検察側は冒頭陳述で、大型バスは中型バスよりも内輪差と運転手からの死角が大きいため、エンジンブレーキの適切な操作など高度な運転技術が必要だと指摘。「高橋、荒井両被告は運転手の技量を確認してから従事させる義務があるにもかかわらず、指導を怠った」とした。
ハンドルを握っていた男性運転手(当時65歳)が事故で死亡したため、捜査は長期化した。長野地検は、運行会社から押収された書類などを分析し、車両に不具合はなく、運転手の操作ミスが直接的な事故原因だったと判断。県警の書類送検から約3年半たった今年1月、両被告を在宅起訴した。
事故を予測できたか。事故を防ぐために必要な措置は取っていたか。こうした点を巡り、検察、弁護側は公判で主張を展開することになりそうだ。
事故は貸し切りバスの安全対策を見直すきっかけにもなった。
国土交通省は事故後、民間10機関による貸し切りバス営業所への年1回の巡回指導を始めた。走行中の車内外を撮影するドライブレコーダーの搭載と映像記録の保存も義務づけた。道路運送法も改正され、過労運転などをさせた悪質事業者への罰金を「100万円以下」から「1億円以下」にした。