「あなたのやっていることは不要不急だ」。高齢の祖母らと暮らす滋賀県内の女子大学生(23)は、新型コロナウイルスの感染を恐れる家族から人混みに出ることを禁じられた。「社会から価値がないと思われているのではないか」。そんな思いが湧き上がったという。新型コロナの感染拡大は、若者の生活にも大きな影響を与えた。31日に投票が迫る衆院選で、大学生たちは1票にどのような思いを込めるのか、取材した。【諸隈美紗稀】
女子学生は90歳を超える祖母ら家族4人で暮らす。欧州への1年間の留学予定が2020年2月、新型コロナの影響で中止になり、自分の将来を考える県外の学生団体に精力的に参加していた。ところが、同年4月、家族から「あなたのやっていることは自分のためでしかない」と言われたという。それから7月ごろまで女子学生は、ほとんど自宅やその周辺で過ごしたという。「不要不急」が叫ばれ、「何も前に進んでいない状況に疲弊していた」と当時を振り返る。
一方で、コロナ禍の経験を通じて政治に関心を抱くようになった。政治家の発言が自分の生活に直結していると知ったからだ。「自分らしく生きていける社会になってほしい」と政治の行方に希望を抱いている。
草津市の平田束(つかね)さん(20)は昨年、コロナ禍の中で立命館大に進学した。「入学式もなく、すぐに大学が休校になり、授業が始まっても、ほとんどオンラインだった」。当初、基礎疾患のある祖母と2人で暮らしており、感染が心配で気軽に外出ができなかった。入学から半年後、1人暮らしを始めた。アルバイトをしたり、外出したりし「誰かと話すだけでもリフレッシュできることに気づいた」という。
「人が食を通じて幸福を感じられる社会を作りたい」との思いで平田さんは大学の食マネジメント学部に進んだ。いわゆる「孤食」が増えていることについて平田さんは、働く親が子どもと一緒に食事をする時間を確保できない現状があると考える。コロナ禍で孤食は加速していると感じており、「働き方と食を重視する政治家が増えてほしい」と願う。
コロナ禍の昨年、同志社女子大に入学した大津市の井ノ口環(たまき)さん(19)は、想像と違った大学1年目を残念がる。「友達とカフェに行ったり、授業の間に話したり、学食で食べたりしたかった」。一斉休校後、授業が再開してもパーティションで仕切られた空間での食事や、学生同士の配布物手渡し禁止など、制限のある生活が続いた。「高校生のころ抱いた『学校嫌い』がよみがえった」。今年4月から休学することにした。
休学中、学外で農業関係の活動を続ける井ノ口さんは「気候変動など、環境問題対策をしっかりやってくれる候補に投票したい」と話す。
学生を支援する大津市の就職活動スペース「tugumi(ツグミ)」を運営する「Re―birth(リバース)」の代表、竹林竜一さん(44)は、コロナ禍の学生たちについて「横のつながりを作る機会が減り、『助けて』と言える関係性がなくなっている」と指摘する。
竹林さんが驚いた出来事があった。コロナ禍で学生への食材無料提供の活動を始めたところ、学生から「もらってごめんなさい」と声を掛けられたのだ。謝罪される意味が分からなかった。学生に理由を聞いたら「食材は自分で買わないといけないものだから」という言葉が返ってきたという。
「『自己責任』という言葉が、困っていることも自分で解決しなければならないという考えを生み、学生の『ごめんなさい』という言葉につながった」と竹林さんは考える。若者の孤立、孤独が深刻化する中、「若者に寄り添った政治、若者の理想を大人が実現する社会に」と願っている。