ギャンブル依存症対策ないまま 長野発の公営施設、消えない懸念

長野県内初の公営ギャンブル施設となる競輪の場外車券売り場「サテライト信州ちくま」(千曲市八幡)がオープンした。運営事業者は売り上げの一部を地域に還元するとしており、地元住民からは「地域おこしにつながる」と歓迎する声が上がる一方で、「ギャンブル依存症が増える」との懸念も強い。「依存症対策が不十分」とする指摘も県議会であるなど、波紋が広がっている。【坂根真理】
建物内にはレースの情報を映し出す大型モニターが設置され、9月30日のオープン初日は、真剣な表情でモニターに見入る来場者の姿が見られた。上田市の90代男性は「これまで県内になかったからうれしい。いつも前橋まで買いに行っていたんだ」と笑顔だった。
運営事業者「信州ちくま」(千曲市)によると、1日当たり最大4会場の48レースのチケットの購入が可能で、年間約10億円の売り上げを見込む。長野市や上田市など半径20キロ圏内からの来場者が中心になると想定している。
計画が浮上したのは2017年。地元の八幡地区区長会は18年、早期開設を求める請願を市議会に提出し、採択された。だが、反対する有志の市民団体は、ギャンブル依存症の人が増えることなどを懸念し、設置反対の署名活動を展開、約1万人分を集めて市などに提出した。
ギャンブル依存症対策について、国は18年に施行した「ギャンブル等依存症対策基本法」に基づき、各都道府県に「ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定の努力義務を課した。内閣府によると、4月時点で21都道府県が策定しているが、長野は未策定だ。
県議会で竹内正美県議は、9月定例会でこの点を追及。県内初の公営ギャンブル施設が開設されたことに触れ、「県民の身近な問題として対策が必要」だとして同計画の策定状況などを質問した。福田雄一・県健康福祉部長は、23年度末に同計画の策定を検討している考えを示した。
ギャンブル依存症に詳しいある精神科医は「公営ギャンブル施設ができればギャンブル依存症患者は増える恐れがある。計画が未策定なのは遅すぎる」と批判する。反対する市民団体の代表世話人の宮坂平さんも「県外や海外の人が来てお金を落としていくわけではなく、地元の人のお金が吸い上げられるだけ。地域おこしにつながらない」とし、早期撤退を求めていく。
信州ちくまの川俣正美社長は「ギャンブルは『悪』と捉えられがちだが、見方を変えてほしい。売り上げの一部は地域に還元する。皆さんの役に立ちたい」と話した。