《京王線無差別刺傷》「コスプレじゃなくて私服だ」“ジョーカースーツ”加害者が語った真実 緊迫の車内では「『ボン』と爆発音が…」 から続く
「人をやっつけるジョーカーに憧れていた。犯行のための勝負服だ」
警察の取り調べに対し、こう供述しているのは、自称住居不定、無職の服部恭太容疑者(24)。10月31日午後8時ごろ、東京都調布市の京王線布田―国領駅間を走行中の新宿行きの上り特急電車(10両編成)で座っていた70代の男性の右胸を刺し、ライターオイルをまいて車内に火をつけた。
車内は「キャー!」「落ち着いて!」などの悲鳴や怒号が飛び交う混乱状態に陥り、刺された男性のほか、中学3年生~70代の乗客の男女16人が、火災によるのどの痛みなどを訴え病院に搬送されたという。
ジョーカースーツはコスプレか私服か
駆け付けた警察が服部容疑者を殺人未遂の現行犯で逮捕。SNSに投稿された服部容疑者の事件当時の服装が、緑色のワイシャツにネクタイ、紫のスーツ姿だったことから、SNSなどではアメリカのDCコミックス「バットマン」シリーズのジョーカーの服装に似ているという指摘があがっていた。
「犯行日がハロウィンだったこともあり、捜査員もコスプレかと疑ったようですが、服部容疑者は『私服だ』と否定。しかし一夜明けると、ジョーカーへの憧れを口にした。“ジョーカーをイメージした私服”ということのようです」(大手紙社会部記者)
“電車内での殺人”は、2019年に公開されたジョーカーが主役の映画「ジョーカー」を想起させるところもある。元々は心優しいジョーカーが不条理な世の中への不満をため込み、地下鉄で男たちに襲われた際に、持っていた銃で男たちを銃殺。そしてこの事件が悪の道へと突き進んでいくきっかけとなるのだ。
服部容疑者は元々破壊願望があったのか、それともかつては心優しい人物だったのか。事件前の服部容疑者を知る人物らに取材をすると、意外な素顔が浮かび上がってきた――。
服部容疑者の過去を紐解く前に、まずは事件までの足取りを追っていこう。
捜査関係者によると、「服部容疑者は今回の犯行を6月頃に計画したと供述している」という。
「仕事や友人関係がうまくいかず死にたかった」
「同時期にそれまで住んでいた福岡を離れて、神戸・名古屋などを点々として約1ヶ月前に上京したとみられている。事件決行を10月31日のハロウィンの夜に定めたのは『電車に人がたくさんいる』と考えたからのようだ。『自分では死ねないから、大量殺人を犯して死刑になるために事件を起こした』『仕事で失敗して友人関係もうまくいかず死にたかった』とも話している。取り調べに対しては素直に応じている」
約5カ月に渡って計画された犯行。31日当日は午後5時ごろに、宿泊していたホテルから、最寄り駅の京王八王子駅で京王線に乗り渋谷へ向かっている。
「渋谷ではハロウィンの様子を見ていたようです。その後に渋谷駅で再び電車に乗り、明大前駅で乗り換えて、調布駅に行きました。そして『人が多い』上り電車に再び乗り換えて、今回の犯行に及んだとみられています」(社会部記者)
世間を震撼させた事件を起こした服部容疑者のルーツは福岡市にある。地元の中学、高校を卒業後、職を点々としていたようだ。服部容疑者が高校を卒業してしばらくした後に働いていたマンガ喫茶の元同僚が文春オンラインの取材に応じた。
元同僚「ジョーカー姿の写真で、ああ服部だな」
元同僚は「出回っているジョーカー姿の写真を見ましたが、ああ服部だな、とすぐにわかりました」と当時を振り返った。
「福岡市天神のマンガ喫茶で一緒に働いている時期がありました。服部は大学には行っていなかったと思います。1年ぐらいは働いていましたかね。一緒に働いていたのは4年以上前のことですが、勤務態度はとにかく真面目で良かったですよ」
かといって堅物すぎるわけではなく、同僚らとプライベートな話題で盛り上がることもあったようだ。
「地味であまり自分からは喋らない感じだけど、プライベートな話も、振れば普通に笑って答えていて、悪い印象はなかったです。店長からも、スタッフの中で一番ぐらい気に入られていました。漫画『ワンピース』が好きなようで、LINEのアイコンもワンピースのキャラが多かったですね」
当時は見た目も黒髪で真面目だったようだ。この時点ではジョーカー姿とは似つかず、好印象だったという。しかし、そんな服部容疑者に異変が起きる。
「当時、彼には仲のいい彼女がいました。どちらも目立たない、地味なカップルという感じでしたが、彼女のことがすごく好きだった。硬派ぶっていたのか、グラビアや女優には興味がない、という感じでしたね。でもある時その彼女と別れてしまったんです。それからはちょっと変というか、元気がない、病んでいるような様子で、別の同僚も心配していました」
そして、恋人と別れた後に服部容疑者はある事件を起こす。
恋人との破局後に起こした「盗撮事件」
「マンガ喫茶に来たお客さんを盗撮したらしいんです。それがバレて、警察にも連れていかれました。おそらく示談になったはずですが、お店はクビになりました。それまでの印象は良かったのですが、仕事の終わり方が良くなかった」
京王線での犯行動機について、服部容疑者は「仕事や友人関係がうまく行かなかったから」と供述している。4年前の盗撮事件でも、同じように悩むことがあったのだろうか。
しかし悩みがあったとして、無辜の乗客に刃物を向けた犯行は常軌を逸している。
「計画通りに殺せずに悔しい」
捜査関係者によると、服部容疑者は被害者への謝罪や事件への反省は見せず、こうした後悔を口にしているという。刃渡り約30センチの刃物で右胸を突き刺した70代の男性は、命に別条はないものの、いまだ意識は戻っていない。電車内での突然の凶行で、心に深刻な傷を負った人も多いだろう。
服部容疑者は今後何を語るのか。その供述に注目が集まっている。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))