小田急線車内で8月に乗客10人が刃物で刺されるなどして重軽傷を負った事件を受け、国土交通省は9月24日に警備強化などの対策を発表した。だが、危険物の持ち込みによる事件は再び起きた。今回の事件は、大勢の乗客が気軽に利用できる鉄道で、利便性と安全性を両立させる難しさを改めて浮き彫りにした。
国交省が9月にまとめた対策は、駅係員や警備員による巡回の強化、駅構内や車内の防犯カメラの増設など。人工知能(AI)を活用した不審者の検知などにも順次取り組むとした。
東京メトロは、駅構内のポスターなどで「危険物の持ち込み禁止」を周知し、梱包(こんぽう)の不十分な刃物▽塩酸などの酸類▽ガソリンや灯油――などを例示。東京オリンピック・パラリンピックを機に、駅構内のカメラで不審物の置き去りなどを自動検知する対策も取り入れた。だが、ある鉄道会社の関係者は「見える形で危険物を持った乗客でないと、警備員らが手当たり次第に声をかけるわけにはいかない。今回のような事件を完全に防ぐのは難しい」と漏らす。
国交省と京王電鉄によると、事件が起きた車両が布田駅を通過した際、乗客が非常通報装置のボタンを押した。その場で車掌、運転士と会話できる仕組みだが、車掌の問い合わせには応答がなかったという。別の乗客が車掌室のドアをたたくなどしたため、運転士らは異常事態を察知した。車内に防犯カメラはなく、運転士らは停車するまで状況を把握できなかった。
国交省は1日、鉄道各社に対し、警戒監視体制の徹底、強化を要請する通知を出した。担当者は「全ての駅や改札で(空港の)保安検査場並みのチェックをすれば防げる事件もあるだろうが、現実的に難しい」と話している。【土江洋範、木下翔太郎】