日本人の危機感の表れなのか-。第49回衆院選は10月31日に投票、即日開票された。岸田文雄首相(総裁)率いる自民党は小選挙区で苦戦して公示前議席を減らしたものの、常任委員会のすべてで委員長を出して、過半数の委員を確保できる「絶対安定多数」(261議席)に達した。枝野幸男代表の立憲民主党は共産党などと野党共闘したが、外交・安全保障政策への不安からか、公示前議席には届かず失敗した。松井一郎代表の日本維新の会は41議席を獲得して衆院第3党に躍進した。与野党とも、大物議員の落選や小選挙区敗北が目立ち、「世代交代」を印象付けた。中国の軍事的覇権拡大が進むなど、日本を取り巻く安保環境が厳しくなるなか、岸田政権の「決断」と「覚悟」が注目される。 ◇ 「政権選択選挙において、大変貴重な信任をいただいたということになると思う」 岸田首相は10月31日夜、自公与党で過半数(233議席)を確保したことについて、テレビ番組でこう語ったが、決して余裕のある戦いではなかった。報道各社は同日午後、出口調査などをもとに、「自民党の210議席台もあり得る」と厳しい分析もしていた。まさに薄氷の勝利といえる。 今回の衆院選は、新型コロナウイルス対策や経済政策、外交・安保政策などが焦点とされた。「コロナ禍で(有権者に)不安や不満がたまっていた」(自民党の甘利明幹事長)が、新規感染者数が激減して実体経済が動き出し、菅義偉政権末期のような「激しい怒り」は収まりつつあった。 ただ、日本の安全保障の危機は、衆院選の最中に明確になった。 北朝鮮は公示日(10月19日)、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射した。中国とロシアの海軍艦艇10隻は同月17~23日、日本海から津軽海峡を抜け、日本列島に沿うように太平洋を南下し、鹿児島県の大隅海峡を通過した。日本列島をほぼ一周する軍事的威圧を加えてきた。 岸田首相は同月27日、東京・JR赤羽駅前での演説で、中露艦隊などの動きを「不透明な状況」と指摘し、「皆さんの命、日本の平和や生活を守るため、しっかりとした外交・安全保障を進めなければならない」と語ったが、メディアではあまり報じられなかった。 自民党が当初苦戦した背景について、夕刊フジで「ニュースの核心」(金曜)を連載するジャーナリストの長谷川幸洋氏は「岸田政権はメッセージの発信力が乏しい。中露の艦隊の日本列島一周は、昔なら、戦争一歩手前だ。ところが、岸田首相から強い発信は伝わってこなかった。自民党の岩盤支持層は『安全保障政策』を注視しており、『岸田首相は有事に大丈夫か?』と不安視した可能性がある」と語る。
日本人の危機感の表れなのか-。第49回衆院選は10月31日に投票、即日開票された。岸田文雄首相(総裁)率いる自民党は小選挙区で苦戦して公示前議席を減らしたものの、常任委員会のすべてで委員長を出して、過半数の委員を確保できる「絶対安定多数」(261議席)に達した。枝野幸男代表の立憲民主党は共産党などと野党共闘したが、外交・安全保障政策への不安からか、公示前議席には届かず失敗した。松井一郎代表の日本維新の会は41議席を獲得して衆院第3党に躍進した。与野党とも、大物議員の落選や小選挙区敗北が目立ち、「世代交代」を印象付けた。中国の軍事的覇権拡大が進むなど、日本を取り巻く安保環境が厳しくなるなか、岸田政権の「決断」と「覚悟」が注目される。
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「政権選択選挙において、大変貴重な信任をいただいたということになると思う」
岸田首相は10月31日夜、自公与党で過半数(233議席)を確保したことについて、テレビ番組でこう語ったが、決して余裕のある戦いではなかった。報道各社は同日午後、出口調査などをもとに、「自民党の210議席台もあり得る」と厳しい分析もしていた。まさに薄氷の勝利といえる。
今回の衆院選は、新型コロナウイルス対策や経済政策、外交・安保政策などが焦点とされた。「コロナ禍で(有権者に)不安や不満がたまっていた」(自民党の甘利明幹事長)が、新規感染者数が激減して実体経済が動き出し、菅義偉政権末期のような「激しい怒り」は収まりつつあった。
ただ、日本の安全保障の危機は、衆院選の最中に明確になった。
北朝鮮は公示日(10月19日)、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射した。中国とロシアの海軍艦艇10隻は同月17~23日、日本海から津軽海峡を抜け、日本列島に沿うように太平洋を南下し、鹿児島県の大隅海峡を通過した。日本列島をほぼ一周する軍事的威圧を加えてきた。
岸田首相は同月27日、東京・JR赤羽駅前での演説で、中露艦隊などの動きを「不透明な状況」と指摘し、「皆さんの命、日本の平和や生活を守るため、しっかりとした外交・安全保障を進めなければならない」と語ったが、メディアではあまり報じられなかった。
自民党が当初苦戦した背景について、夕刊フジで「ニュースの核心」(金曜)を連載するジャーナリストの長谷川幸洋氏は「岸田政権はメッセージの発信力が乏しい。中露の艦隊の日本列島一周は、昔なら、戦争一歩手前だ。ところが、岸田首相から強い発信は伝わってこなかった。自民党の岩盤支持層は『安全保障政策』を注視しており、『岸田首相は有事に大丈夫か?』と不安視した可能性がある」と語る。