8日午前8時40分ごろ、九州新幹線熊本―新八代間を走行中のさくら401号(広島発鹿児島中央行き、8両編成)の3号車で非常ブザーが鳴り、熊本県宇城市内で緊急停車した。車掌が確認すると3号車内で煙が上がっており、周囲の乗客が消火作業をして間もなく鎮火した。熊本県警は車両の床に火をつけたとして、福岡市博多区大博町、無職、三宅潔容疑者(69)を現住建造物等放火未遂容疑で現行犯逮捕した。
またも走行中の列車内が狙われた。8日朝、熊本県内を走る九州新幹線・さくら401号の車内で起きた放火未遂事件。10月末には東京の京王線で殺人未遂事件があったばかりで、対策の難しさが浮き彫りになった。
「おじいさんがオイルで火をつけた」。さくら401号の8号車に乗っていた大分市の自営業男性(42)によると、容疑者が火をつけた3号車から逃げてきた乗客らは口々に叫んでいたという。「私は直接現場を見ていないが、それでも、すごく怖かった」。石川県から来ていた男性(80)は「列車内での事件が続いており不安だ」と話した。
京王線の事件では、特急電車内で男が乗客を刺したり、ライター用オイルをまいて火をつけたりして乗客17人が重軽傷を負った。
対策は容易ではない。JR九州によると、九州新幹線は全車両に防犯カメラが設置されているが、リアルタイムで監視できるのは「N700系」のみで「800系」は録画用になっている。N700系も運転士が映像を時折確認する態勢で、指令室で常時モニターできるわけではない。さくら401号はN700系だった。同社は「当面は警備体制の強化で対応する」としている。
この日の事件を受けて、JR九州は九州新幹線で1日平均15本のみに添乗させていた警備員を9日以降は当面全ての列車(上下線計107本)で巡回させると発表した。【比嘉洋、土田暁彦、今野悠貴】
危機管理に詳しい河本志朗・日本大教授の話
車両内で犯罪など緊急事態が起きた時、在来線なら次の駅に止められるが、新幹線は駅と駅の間が長いため原則的には乗務員がその場で対応しないといけない。最も重要なのは、車両内で何が起きているのか迅速に把握することだ。把握できれば防刃手袋やさすまたを持った乗務員が急行できるが、把握できなければ犯行を抑えることも乗客を別の車両に避難させることも、警察や消防、指令室と連携することもできない。
車両の防犯カメラで常時監視できていない場合は(乗客が押す)非常ブザーが重要になるが、乗客はブザーがどこにあるか知らないことも考えられる。日ごろから設置場所や機能を表示・アナウンスして知らせておくことが重要だ。鉄道会社によって経営体力に差があるため、国は警備拡充の補助も検討する必要がある。