深紅のワンピースで登庁した木下都議、「ぜひ続けてという声もある」と辞職を拒否

無免許運転で人身事故を起こし、東京都議会を長期欠席していた木下富美子都議(板橋区選出)が9日、7月の都議選で当選後初めて公の場に姿を見せた。議会から2度の辞職勧告を受けた木下都議だが、「ぜひ(議員を)続けてほしいという声があることも事実」などとして辞職を否定。ただ、都議会の各会派は勧告を無視する木下都議に強く反発し、この日の委員会への出席を事実上認めないなど紛糾した。(菅原智、佐藤果林)

深紅のワンピースに紺色のジャケット姿で登庁し、三宅茂樹議長らと面会した木下都議。議長からは議員辞職を求められたがそれには応じず、終了後の報道陣の取材にも「議員活動で答えを出したい」と強調した。
木下都議は取材に、当選後に受け取った報酬192万円をNPO法人などに寄付したことなどを一方的に説明した。ただ、今後の報酬を寄付するかは明かさず、事故に至った経緯も「捜査中なので話せない」と回答を拒否。その発言を聞いた都幹部も「全く説明責任を果たさずに議員を続けるつもりか」とあきれ果てた。

木下都議が登庁したのは、所属する公営企業委員会で質問するためだった。ただ、昼過ぎに始まるはずの同委の理事会では、辞職勧告を受けながら議員活動を続けようとする木下都議が姿を見せたことに、「なぜここにいるのか」と反発した理事ら2人が退出。理事会を始められず、同委も開かれない事態となった。
関係者によると、各会派は木下都議が出席しようとした際には、委員会を開かないよう事前に調整していたという。同委員の一人は「現状で出席は受け入れがたい。当然、辞職するべきだ」と批判した。

各会派が強硬手段に出たのには、打つ手がないという事情がある。地方自治法では出席議員の4分の3以上の賛成で議員を除名できる懲罰規定があるが、都議会局などによると、議会外での行為を理由に懲罰するのは判例上難しく、体調不良による長期欠席を懲罰理由とすることも困難という。
有権者によるリコール(解職請求)も当選から1年間は行えない。しかも、木下都議が選出された板橋区の場合、リコールには14万人超の有権者の署名が必要になるとみられ、実現には高いハードルとなる。
自民党幹部は「勧告を無視する議員は、議会が追い込んでいくしかない」と苦々しげに話す。ただ、都庁内では議会の停滞への懸念も広がっており、木下都議を党から除名した都民ファーストの会の幹部は「いつかは委員会を開く必要がある。木下都議との根比べにはしたくないのだが……」と悩ましそうに話した。