欧州の移民が失敗した理由 日本は大丈夫か 事実上「移民解禁」の懸念に「岸田政権は流れを止める責務がある」藤井氏

岸田文雄政権が外国人労働者の在留資格「特定技能」のうち、長期在留や家族の帯同が可能な「2号」資格の対象分野を拡大することを検討している。「事実上の『移民解禁』ではないのか」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と懸念する声もあるなか、移民受け入れを進めた欧州では経済の圧迫や治安の悪化など深刻な弊害も目立つ。同じ轍を踏む結果になりはしないか。
外国人就労の特定技能のうち、熟練した技能を持つ即戦力とされる「2号」は現在、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみで、出入国在留管理庁によると、今年9月末時点で2号の在留者はいない。
一方、相当程度の知識又は経験を必要とする技能水準とされる「1号」は農業や自動車、外食など製造業、サービス業を含む14分野で受け入れている。在留する外国人は今年9月末時点で3万8337人。ベトナムが2万3972人、フィリピンが3591人、中国3194人、インドネシア3061人などが上位だ。
移民とは異なるという位置付けを強調した制度だが、岸田政権は2号の受け入れ分野を大幅に拡大する方向だ。外国人就労をめぐっては、労働環境について問題も多い技能実習生から1号への移行が可能で、さらに実務経験を経て2号へ移行する道も広がることになる。
欧米では、移民制度で大きな代償を払った国もある。
元内閣官房参与で、京都大大学院の藤井聡教授(公共政策論)は、「欧米における移民へのアレルギーは、ドナルド・トランプ政権の誕生や、英国のEU(欧州連合)離脱という形で表れた」と指摘する。
藤井氏によると、英ロンドンでは労働力として受け入れた移民が人口の3分の1に達し、社会が不安定化した。フランスでもパリから約20分程度の移民街は旧植民地の北アフリカ出身者が多く、2015年のパリ同時多発テロの舞台となった。
藤井氏は「治安の悪化など深刻な問題を抱えてしまうほか、経済面では賃金が下がることにつながる」と指摘する。
最近では中東の難民や移民らがEUへの入域を求め、ベラルーシとポーランドの国境で緊張が起きたことは記憶に新しい。EU外相理事会は15日、ベラルーシがEU側に移民を送り込み、「ハイブリッド攻撃」を仕掛けているとして、同国への制裁強化を決定する騒動にまで発展した。
前出の藤井氏は、日本の現状について「外国人の受け入れ拡大は政府や自民党が、賃金を下げたい経済団体の圧力を受けて進めてきたものだが、欧米の二の舞いを演じ始めている。岸田政権が『新自由主義からの転換』や『所得倍増』、『分厚い中間層』を掲げるならば、受け入れの流れを止める責務があるはずだ」と強調した。