北京五輪“全面ボイコット論”浮上、日本はどうする? カナダで強硬な主張「選手が人質になる」 日本は政治家も外務省も方針あいまい

来年2月の北京冬季五輪・パラリンピック開幕まで2カ月余り。中国の人権弾圧を理由に米国や英国が「外交的ボイコット」を検討するなか、共産党幹部から性的暴行を受けたという女子テニス選手、彭帥(ほう・すい、35)の告発も影を落とす。国際オリンピック委員会(IOC)は火消しに躍起だが、カナダでは全面ボイコット論も出始めた。日本はどう向き合うべきか。

北京での冬季五輪は2015年に招致が決まったが、新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧、台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入など、ホスト国の中国による強権的姿勢が批判を集めた。
ジョー・バイデン米大統領やボリス・ジョンソン英首相は首脳や政府使節団を送らない「外交的ボイコット」を検討すると明かし、欧州連合(EU)欧州議会も人権状況次第で政府代表らの招待を断るよう加盟国に求める決議を採択した。
中国外務省の趙立堅報道官は今月22日の記者会見で「騒ぎ立てても、各国のスポーツ選手の利益を害するだけだ」と反発。23日にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が開会式に出席する方向で調整していると明らかにした。
より強硬な主張も出ている。カナダ紙グローブ・アンド・メールは23日、米英両国が検討している外交的ボイコットでは、派遣選手を中国の「人質」とする危険にさらしかねないため、全面ボイコットにするべきだとするカナダの元外交官、エリック・モース氏の論評を伝えた。モース氏は1980年のモスクワ五輪ボイコットに関わった経験を持つ。前年の旧ソ連のアフガニスタン侵攻をきっかけに米国がボイコットを呼びかけ、カナダのほか日本も選手を送らなかった。
国際的な批判とは裏腹に、IOCは中国に近い立場をとる。トーマス・バッハ会長は、消息不明とされる彭帥とビデオ通話を行ったと発表したが、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は「中国政府のプロパガンダに加担するな」とIOCを批判する声明を発表した。
スポーツライターの小林信也氏は「(ナチス政権下の)36年ベルリン五輪やモスクワ五輪が開催されてきた歴史を振り返れば、IOCが人権を尊重する立場に立った過去はほとんどない。中国のスポンサーから支払われるチャイナマネーの存在も指摘されるが、スポーツ文化を支配してきたIOCの体質は中国共産党と親和性が高い印象も受ける」と指摘する。
日本の態度はまだどっちつかずだ。岸田文雄首相は19日、バイデン政権の外交的ボイコット検討を受けた政府対応について「日本は日本の立場で考える」と述べるにとどめた。
林芳正外相は、中国の王毅外相と18日に行った電話会談で訪中の招待があったと明かしたが、自民党の佐藤正久外交部会長は24日、外交部会などの会合で「(林氏の訪中は)間違ったメッセージを海外に出すことになる」と強調した。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「日本経済は中国への依存度が高く、企業は対中強硬姿勢をとることで関係が悪化することを恐れている。自民党も企業の反発を無視できない党内力学が働いているのではないか」と分析する。
政治家だけでなく、外務省の外交方針もあいまいな態度の背景にあると黒井氏はみる。
「外務省には、厳しい態度を取るよりも融和的な外交を志向する伝統のようなものがある。米国からはボイコットを求める圧力がかかるだろうが、外務省はそっとしておきたいのが本音だろう。最終的には岸田首相自身がきちんと意思表明することが求められるのではないか」