これでは「盗人に追い銭」ではないか--。
所得税法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された「日大のドン」こと田中英寿理事長(74)が1日、大学側に「理事長としての職務ができず、空白期間をつくるべきではない」と辞任の意向を伝えた。事件については「現金を受け取っていない。脱税はしていない」と改めて否認している。
大学は臨時理事会を開き、田中理事長の辞任を承認。ようやく「被害届」を出すことを決めた。とはいえ、理事長本人が辞任の意向を示したこともあって、解任はしなかった。大学関係者によると、「解任」ではなく「辞任」のため、億単位の慰労金が支払われるという。田中理事長は理事を経て2008年、理事長に就任し、現在5期13年目。
3年前のタックル問題で、日大の第三者委員会はアメフト部の内田正人元監督を懲戒解雇処分にしている。ところが、その後、東京地検立川支部が「嫌疑不十分」として内田元監督を不起訴処分にしたため、解雇無効の民事訴訟を起こしていた内田元監督と大学の間で和解が成立し、「懲戒解雇」ではなく、「退職」扱いとなった。
「当時、常務理事だった内田さんは田中理事長の最側近で、次期理事長といわれていた。年収3000万円を超える高給取りでしたから、『慰労金』として7000万円が支払われたそうです。田中理事長も辞任ですから規定通り慰労金が発生し、内田さんを大きく上回り、億単位になるのは間違いありません。本人からの辞任の意向と聞いて、ほとんどの理事は内心ホッとしていますが、さすがに『辞任はマズい』『大学の信用を著しく傷つけたわけですから、解任すべきだ』という声も出ています」(日大関係者)
「辞任」後も影響力
田中理事長は「辞任」後も影響力を残す可能性があるという。三十数人いる理事のほとんどは実質、田中理事長が決めている。理事会の内容も逐一、田中理事長に伝わっているという。
田中理事長は自分にまで捜査の手が及んだことで、「アイツとコイツだけは許さん」と息のかかった理事を操って報復を企てているという。「日大のドン」は辞任後も陰で睨みを利かせ、国内最大のマンモス校を牛耳るのか。