新型コロナウイルスの感染者が急増した「第5波」が収束傾向にある中、忘年会シーズンが本格化する。売り上げが落ち込んだ飲食店支援などに向け、山形県の自治体は職員が率先して会食するように促す「会食心得10か条」を定めたり、会費の一部を助成したりして、手を尽くす。一方で、民間信用調査会社の調査に、企業の7割超が自粛すると回答。果たして活気は戻るのか。街を歩いてみた。【長南里香、岡崎大輔】
11月下旬の週末。山形駅に近い和食店で4人の公務員がテーブルを囲んでいた。会話は、仕事内容や職場の人間関係、恋愛など多岐にわたっていた。4人の勤務先は、会食に関する独自の基準は設けず、県の「心得」を適用しているという。
従業員の女性は、1年前の同時期との違いを話す。「昨年は電話が鳴ると、ドキッとした。予約の『キャンセルか』と暗い気持ちになったが、今は逆。予約の電話か、席の空き具合の問い合わせなので、うれしくなる」と話す。別の居酒屋の男性は「『第6波』のことを考えると、今のうちに稼いでおかないと」と本音を漏らし、徐々にだが、客足は戻りつつあるようだ。
県は11月、経営が苦しい飲食業界を支援するため、職員が積極的に利用する際の「会食心得10か条」をまとめた。知事部局の約4000人が対象で、県議会や各種団体からの要望を受けて検討。お酌はしない(上司への気遣い不要)や、飲酒は節度を守り、深酒は控えるなどだ。
その心得の中で、利用を促している県の「コロナ対策認証店」のうち飲食業は11月30日現在、2436件に上る。吉村美栄子知事は「『第6波』は必ず来るとの認識で、感染防止対策を徹底してほしい」と呼びかけた。
また、天童市は、12月中、忘年会の1次会から2次会への流れを支援する。市民から若干の批判も寄せられているというが、1次会は、県の対策制度の認証を受け、今回の事業に参加登録した市内の居酒屋を利用するなどの条件を満たせば、1人当たり利用額の半額、最大3000円を支給。2次会は、夜9時以降営業し、酒類を提供しているなどの条件に適合する店舗に10万円を給付する。
民間企業は忘・新年会開催、消極的
一方で、民間企業は大がかりな、忘・新年会の開催に、消極的なようだ。東京商工リサーチによると、今年10月、県内企業にインターネットでアンケート調査した結果、「緊急事態宣言、まん延防止等重点措置に関係なく開催しない」と回答した企業は74・51%。逆に関係なく開催するは2・94%だった。
東京商工リサーチ山形支店は「飲食店はかき入れ時だが、消費マインドが向いておらず、当てが外れた、と不安を感じるかもしれない」と話した。
鶴岡市は、県の条文を参考に、普段一緒の職場単位や、2時間以内などの心得を設けた。それでも、同市内の自動車販売店の担当者は「少人数でも、飲食や会合は控えるようにしている」。酒田市の観光会社も「『第6波』が訪れるかもしれない中、積極的に忘・新年会を会社単位で開くのは腰が引ける」と話した。