岸田首相、危うい「国益」発言 米の北京五輪「外交ボイコット」受け、閣僚派遣見送り検討 石平氏「人権を強調した発信せよ」

ジョー・バイデン米政権が、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧に抗議し、来年2月の北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を発表したことを受け、岸田文雄政権も閣僚の派遣を見送る方向で検討している。ただ、発信の仕方次第では、日本の「人権」への姿勢を疑わせることになりかねない。
「五輪や、わが国の外交にとっての意義を総合的に勘案し“国益の観点”から自ら判断していきたい」
岸田首相は7日、米国の「外交的ボイコット」発表を受けて、記者団にこう語った。
林芳正外相も記者会見で、「適切な時期に“諸般の事情”を勘案して判断するが、現時点では何ら決まっていない」と述べた。
米政府は6日午後(日本時間7日未明)、中国のウイグルでの人権弾圧を「ジェノサイド(民族大領虐殺)」(ジェン・サキ大統領報道官)と断定して、「外交的ボイコット」を発表した。
これを受け、オーストラリアのスコット・モリソン首相は8日、北京冬季五輪に閣僚や高官を派遣しないと語り、英国やカナダなどでも検討する動きが広がっている。人道上、ジェノサイドは看過できないのだ。
こうしたなか、産経新聞は8日朝刊で、日本政府が北京五輪への閣僚の派遣を見送る方向で検討していると報じた。閣僚ではないスポーツ庁の室伏広治長官や、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長を派遣する案が浮上しているという。
中国は東京五輪開会式に、閣僚級の苟仲文国家体育総局長を出席させたが、日本が閣僚級を派遣すれば、国際社会に誤ったメッセージを与えるとの判断があるようだ。
ならば、岸田首相や林氏は「国益の観点」「諸般の事情」といった損得を印象付ける言葉ではなく、もっと「人権」を強調すべきではないのか。
日本は歴史的に「人権問題の是正」を呼びかけてきた。第一次世界大戦後の1919年に開かれたパリ講和会議でも、人種差別撤廃の提案を行っている。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「日本は自由主義の主要国家として、もっと『人権』を強調した判断・発信をすべきだ。『人権弾圧』と『国益』を比較するような発信は、米国をはじめとした先進国との関係に隙間をつくり、中国を利することになりかねない」と語った。