山頂に向かうヒキガエル…麓の池で育った後、最大10万匹が600mの「登山」

福岡県太宰府市の市民遺産である「宝満山のヒキガエル」が無事に山頂まで登るためのコツをまとめたガイドブックが、インターネット上で公開されている。子ガエルに対し、登る際の注意点を助言するというユニークな形で神秘的な生態を紹介しており、地元の保護団体「宝満山ヒキガエルを守る会」が作成した。第2版も新たに公表され、子ガエルの“登山技術”から登山者が学ぶべき注意点も訴えている。(小松一郎)
同会会員で佐賀大名誉教授の田中明さん(77)(環境情報学)が2018年、カエルの生態を知ってもらおうと、「ヒキガエルのための宝満山登山ガイドブック」を作成した。
「昆虫、ミミズなどの食べ物は現地で調達できますが、水分不足には気をつけて」「雨が降らずに湿度が低いときは乾燥によって死亡することもあるので、落ち葉の下、草むらや斜面の小さな穴など湿度が高い場所に避難し、雨が降るのを待つこと」などと、子ガエルに呼びかける形で生態を紹介した。
「ヤブの中からいきなりヤマカガシが襲ってきます。登山道の幅が広い所では、端の方を通らない方がよいでしょう」と、天敵の存在にも触れ、子ガエルが直面する危険も描いた。
田中さんは今年8月、第2版をまとめた。内容を一部修正した上、「ヒキガエルから学ぶ登山者の登山技術」を付録として追加した。
付録では、子ガエルが1匹の時はアリから

執拗
(しつよう) に襲われることから、「安全のためには、ソロ登山は避けた方がよい」と助言。子ガエルが垂直の壁面などを登る時の四肢の動きは、三肢でしっかりとつかんで体を支え、一肢だけ動かす「三点支持」という基本技術に忠実であることを紹介している。
また、雨が降らず、乾燥した日が続くと、子ガエルは何日も動かないため、「あくまで安全第一で、くれぐれも無理しないこと」とも呼びかけている。
第2版は田中さんが管理するサイト「虹の松原七不思議の会」の「宝満山コーナー」で公開されている。
警察庁の統計によると、20年に県内で発生した山岳遭難は44件(前年比11件増)で、死者は4人(同2人増)だった。田中さんは「カエルが焦らず、無理をせず、基本に忠実に登っていることを学び、人間も登山を安全に楽しんでほしい」と話している。
◆宝満山のヒキガエル =宝満山ヒキガエルを守る会によると、例年5月頃、宝満山(829メートル)の麓の池でオタマジャクシから体長1センチほどの子ガエルになり、1万~10万匹が林道の側溝や登山道などをよじ登って標高差約600メートル、約2・5キロの道のりを経て山頂へ向かう。100~1000匹ほどが6月下旬~7月初旬頃に登頂し、数年後に麓の池に下りて繁殖行動をするとみられる。太宰府市は2020年10月、市民遺産に認定した。