10万円給付決定直後、相次いだウソ電話…県警「また出たか」

コロナ影響 件数2・4倍/全国拡大 被害38億円

医療費などの還付や、給付金の支払いをすると偽って現金をだまし取る「還付金詐欺」が急増している。10月末時点で、昨年同期は21都府県だった被害が、宮崎県を除く46都道府県に拡大し、詐取された総額は倍増の約38億円に達した。年末は例年、「今年中に手続きをして」とせかしてだます手口が目立つため、警察当局が警戒を強めている。(小林岳人)

埼玉県の高齢者宅に先月下旬、新型コロナウイルス対策の給付金について、ウソの電話が相次いだ。「65歳以上の方にも5万円が支払われることになりました」。政府が子供に10万円相当の給付を行う経済対策を決めた直後だった。
「また出たか」。県警生活安全総務課の藤木渉次席(52)は苦り切った様子だ。コロナ禍で、感染が拡大したり、給付金や補助金のニュースが流れたりする度、同じような詐欺の電話が増えるという。
東京都渋谷区の70歳代の女性宅には2月、区職員をかたる人物から「コロナの医療給付金が支給される」と電話があった。言われるがまま近くの現金自動預け払い機(ATM)に向かい、教わった電話番号にかけると、「サポートセンター」の職員を名乗る男が出た。
携帯電話で指示を受けながらATMを操作すると、男は「2日後に連絡する」と言い残して切った。翌日、女性は友人の指摘でだまされたことに気づいた。給付を受ける手続きをしたつもりが、見知らぬ外国人名義の口座に約400万円を振り込んでいた。
女性は警視庁に対し、こう言って悔やんだ。「感染が広がっているので、つい自分も給付金をもらえると信じてしまった」

還付金詐欺が初めて確認されたのは2006年。08年に過去最悪の約47億円の被害が出たが、金融機関の注意喚起などが奏功し、10年に約7000万円まで減った。だが、16年に急増し、約42億円が詐取された。
警察庁によると、その後はおおむね、減少傾向だったが、今年になって再び大きく増え、認知件数は前年同期比約2・4倍の3385件になった。16年(3682件)を上回るペースで、約9割は65歳以上だ。
認知件数の最多は東京で、前年同期比約3割増の786件(被害総額約10・9億円)。大阪705件(約7・2億円)、兵庫271件(約2・4億円)と続く。福岡74件、広島44件など、前年は被害がなかった道県にも広がる。
これまではATMの多い首都圏の被害が多かったが、還付金詐欺への警戒心が薄い地方の自治体が狙われている可能性があるという。

被害が増えた理由の一つとして、警察当局が挙げるのは特殊詐欺の「受け子」不足だ。
息子などのふりをするオレオレ詐欺や、封筒に入れさせたキャッシュカードを別のカードとすり替える「詐欺盗」には、被害者宅を訪ねて現金などを持ち帰る受け子が登場する。
顔をさらすため、摘発が相次ぎ、警視庁は今年1~6月に247人を逮捕。初犯で実刑判決を受けたケースもあり、詐欺容疑で今年逮捕された20歳代の男は「大して報酬ももらえず、割に合わない」と供述した。捜査関係者によると、詐欺グループは以前より、受け子を集めづらい傾向にあるという。
一方、還付金詐欺は高齢者に電話を通じてATMを操作させるため、受け子は必要ない。警察幹部は「オレオレ詐欺グループなどが、還付金詐欺に移行した可能性がある」と指摘する。