院内奥に多数の被害者集中 煙が充満し逃げ場失う 大阪ビル放火

大阪市北区曽根崎新地1の雑居ビルで男女24人が死亡した放火殺人事件で、多数の被害者は出火元とされる4階の心療内科クリニック奥の診察室周辺で倒れていたことが、大阪府警への取材で判明した。死者はいずれも4階から救急搬送され、一酸化炭素中毒だったとみられる。現場は外部に避難できる出入り口付近が激しく燃えており、府警は多くの患者らが逃げ場を失い、室内に充満する煙を吸い込んだとみている。
火災が起きたビル4階の「西梅田こころとからだのクリニック」は約80平方メートルで、東西に細長い構造になっている。西側の出入り口近くには外部に出られる非常階段やエレベーターが1カ所ずつ設置されているが、診察室などがある院内奥の東側は避難経路が確保されていない。
府警が出火直後の状況を調べたところ、焼損面積は出入り口周辺の約25平方メートルにとどまっていたにもかかわらず、被害が拡大していた。負傷した28人のうち、心肺停止状態だった27人全員がビル4階で発見された。その大半は診察室や、リハビリなどにも使われる隣接の大部屋の周辺で倒れていたことが明らかになった。
クリニックのホームページや元患者らによると、出火当時は職場復帰を目指す患者らが集う「リワークプログラム」が開かれていたとみられ、普段から20人程度が参加するこの集いは大部屋が使われていたという。
捜査関係者によると、放火への関与が疑われる60代の男性患者はクリニックの出入り口近くで可燃性の液体をまいたとされ、その直後に炎が上がったとの複数の目撃情報がある。亡くなった24人は一酸化炭素中毒だったとみられ、目立ったやけどの痕はなかった。液体はガソリンの可能性もあり、府警はクリニック内部で黒煙が一気に充満した可能性が高いとみている。
東京理科大の菅原進一名誉教授(建築防災学)は「被害拡大を防ぐには2方向の避難経路を設けるのが基本だが、現場のビルは狭く確保が難しい構造。出入り口付近で出火すると、クリニックにいた人は逃げ場を無くしてしまう」と指摘。ガソリンなどが使われた場合として、「一酸化炭素が室内に急速に充満し、吸い込めば意識をすぐ失う恐れがある。今回はこうした複合的な要因が重なり、大惨事を招いた可能性がある」と語った。【澤俊太郎、沼田亮、木島諒子、松本紫帆】