大阪市北区のクリニックで起きた放火殺人事件では、24人の死者で死因が判明した13人は全員が一酸化炭素(CO)中毒だった。CO中毒は建物火災による死亡原因の4割近くを占めるとされるが、どんな症状なのか。
COは無色・無臭の気体で、吸い込んでも気付きにくい。換気をしないでストーブを使い続けたり、火災が起きたりした際に急激に増える。
吸い込むと、血液が運ぶ酸素の量が減る。COは、血中のヘモグロビンとの結合力が酸素よりも強いからだ。このため体内の細胞に酸素が十分届かなくなり、吸い込んだ量によってさまざまな症状が出る。空気中の濃度が0・02~0・03%でも頭痛や耳鳴りを引き起こし、0・5~1%であれば1~2分の吸引で死に至る。治療には、できるだけ早く酸素を投与する必要がある。
今回の事件では、多くの被害者がクリニックの奥で亡くなっていた。防災システム研究所の山村武彦所長は「ガソリンなどの可燃物による激しい燃焼で、0・5%を超える高濃度のCOが発生したのではないか。窓のない奥の方にCOがたまり、多数の犠牲者が出たと推測される」と話す。火災では一般的に「体を低くして避難を」とも言われるが、COの比重は空気とほぼ同じだ。山村所長は「現実には人の動きでかくはんされてしまう。煙を見たら息を止めて安全な場所に脱出するしかない」と指摘する。
消防白書によると、2019年の建物火災による死因の中ではCO中毒・窒息が全体の38・5%を占め、やけど(34・2%)を上回って最多だった。【宮川佐知子、高野聡、澤俊太郎】