最近よく聞く「野党は批判ばかり」という言葉。これって今年の裏流行語ではないだろうか。
だって与党だけではなく野党の新代表にも響いている。立憲民主党の泉健太代表はかなり気にしている模様。その結果がこれ。
『立憲・泉代表、「批判ばかり」イメージ刷新狙い政策提案も首相から回答なし』(日刊スポーツ12月8日)
この光景を保守派はどう見た?
記事の最後は「論戦は盛り上がらず、空回りに終わった」とある。では、保守派からはこの光景はどう見えたのだろう。産経新聞を見ると面白かった。予算委員会デビューの岸田首相についてこんな評価をしていた。
『「聞く力」で野党かわす』(12月16日)
パワーワード「聞く力でかわす」。それって聞いてるふりだけじゃん! と思うのだが、首相が余裕でスルーしている様子がわかる。そして産経師匠も野党は「迫力不足は否めない」と余裕しゃくしゃく。どうやらこれが「批判より提案」の現実っぽい。
そもそも「野党は批判ばかり」なのだろうか。辻元清美氏(立憲前職)は次のように証言している。
《私が国対委員長のときに関わった法案のうち、8割は賛成でまとめています。でも、野党の賛成はニュースにならず、対立法案はニュースになる。だから、有権者は『野党は反対ばかり』というイメージを抱きがちなのだと思います。》(朝日新聞デジタル12月3日)
批判ばかりという“イメージ”
ここで注意したいのは、野党は反対ばかりという「イメージを抱きがち」という部分。代表選でも泉氏は「批判ばかりと思われているイメージを変える」と訴えていた。批判ばかりの根拠が「イメージ」という言葉とセットになっていることがわかる。
そのイメージは誰がひろげたのだろう? 面白かったのはこちらの分析だ。
『Dappiのツイート、誰が投稿? 平日に作業集中、頻出単語は…』(朝日新聞デジタル12月3日)
ツイッターの匿名アカウント「Dappi」。プロフィル欄に「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます。」と記し、野党を批判するツイートが多かった。
この「Dappi」の投稿内容を、テキスト分析ソフトを使って分析した記事なのである。
あっ! と思ったのは次だ。
「Dappi」が最もよく使ったフレーズ
《「安倍」を含む706件のツイートを分析すると、最もよく使われたフレーズが「野党『ギャーギャー』」だった。》
いかがだろうか。
安倍政権時に「野党ギャーギャー」というツイートが量産され拡散されていたのだ。しかも、このアカウントはデマも混ぜてツイートしていた(だから名誉棄損の裁判になっている)。
デマも入れた刺激的な表現をSNSでずっと拡散していたら、何気なくSNSを使っている人でも「イメージ」を刷り込まれる場合もあるだろう。こういうのが「野党は批判ばかり」の下地を作った可能性はないか。言ってみれば“地道なSNS活動”が実を結んだのではないか。
では「Dappi」は誰がどんな目的で発信していたのだろう。特定の政党と関係はあったのか、なかったのか。かなり重要な問題になってくる。野党の新代表にここまで気にさせることに成功し、国会論戦にまで影響を与えた可能性をもっと重く考えたほうがいい。
「野党は批判ばかり」と言う人にオススメのブログ
先週はギョッとするニュースが各紙の一面に並んだ。『国交省 統計書き換え』と『森友 決裁文書改ざん訴訟 国が幕引き』である。後者では、自死した赤木俊夫さんの妻雅子さんは国の対応は「不意打ちでひきょうだ」「お金で済む問題でない」と悔し涙を流した。
私は先ほどの岸田首相の見出し『「聞く力」で野党かわす』を思い出した。一見すると低姿勢に見えるが、肝心なことは明らかにしないでさっさと終わらせる手法。これは赤木さんの訴訟幕引きと同じ構造である。こんな状況が繰り広げられる今、野党がきちんと批判しないで誰がするのだ。
それでも「野党は批判ばかり」と言う人には、ある方のブログをおススメしたい。菅義偉氏である。過去の国会答弁やブログを調べると、自民党が野党だった2009~12年には政権の座にいた民主党を鋭く追及していた。野党時代の菅氏は的確な権力批判、監視をしていたのだ。
過去の発言が強烈なブーメランに
昨年、私は毎日新聞の記者とともに菅氏の過去ブログを調べたことがあった。菅さんのブログは読みどころ満載だった。
たとえば「お答えを差し控える」という大臣の発言を「全く不真面目で国民を冒涜する発言」と批判していた(10年11月の投稿)。さらに「官僚の原稿を棒読み」も批判していた(12年4月の投稿)。
当時の野田政権下の田中直紀防衛相の国会答弁について、
《官僚の原稿を棒読みし、失言を恐れた官僚にあわてて打ち切られる会見の映像を見て、情けなさを通り越して恐怖すら覚えました。》
《答弁のたびに後ろに座る官僚の説明を受ける姿を「二人羽織」「千手観音」と揶揄される有様です。》
素晴らしい。しかし首相になった菅氏もお答えを差し控えるやら棒読みを連発していたのだが……。
野党時代の菅氏はキレッキレだった
菅氏のブログにはまだあった。2010年5月の投稿。資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反に関連し、小沢一郎・元民主党代表の説明責任を追及。
《潔白を主張するならば、偽証罪を問われる証人喚問に応え、公開の場で説明すべきです》
このあと菅官房長官時代には「桜を見る会」をめぐって、野党が安倍晋三前首相の証人喚問を求めて同じように追及していたのだが菅氏はスルー。いずれにしても野党時代の菅氏はキレッキレで最高だった。当時の菅氏のブログは「与党への批判ばかり」なのだが、野党は批判するのが大事な仕事の一つと思わせてくれる。
安倍元首相は118回も虚偽答弁
菅氏の野党時代が終わり、約9年間の安倍・菅政権になるとギョッとしたことがとにかく多すぎた。安倍晋三元首相は「桜を見る会」前夜祭に関する疑惑を巡って虚偽答弁を118回もしていた。森友問題では公文書改ざん。菅前首相は日本学術会議からはじまり五輪、コロナ対策までろくな説明、発信をしなかった。
ところが最近聞こえてくるのは「野党は批判ばかり」。
立憲民主党の泉代表は「野党は批判ばかり」という印象操作にまんまとハマってしまったように見える。少しは野党時代の菅氏を見習ったらいかがだろうか。
(プチ鹿島)