ストーカーで有罪判決受けた男性「治療で人生変わった」…おもちゃの携帯使い欲求減らす

北海道内でストーカー規制法に基づく警告件数が2年連続で増加している。昨年は新型コロナウイルスによる在宅勤務の増加で、時間にゆとりができたことが影響した可能性もある。道警は全国に先駆けて医療機関と連携し、加害者に治療を受けさせる取り組みを導入し、再発防止に力を入れている。
道警によると、2018年に91件だった警告件数は、19年に104件、20年に118件と2年連続で増えた。一方、検挙件数は18年は118件、19年は94件、20年は86件と減少。警告を早めに出すことで、抑止効果が生まれたとみられる。
道警は15年から警察庁と協力し、警告対象となった加害者に治療を促している。過去にストーカー加害者の治療経験がある道内の医師の協力が得られたためで、同様の取り組みは16年以降に全国の警察に広がった。
治療法の一つが「条件反射制御法」。繰り返しメールを送ってしまう加害者におもちゃの携帯電話を渡し、メールを送る動作をさせる。実際は送信できないという「失敗」を繰り返すことで、ストーカーをする欲求が減っていくという。
現在は59医療機関が道警と連携して治療に取り組んでいる。15年から協力している大通公園メンタルクリニック(札幌市中央区)では、条件反射制御法を取り入れるなどし、これまでに約60人を受け入れた。
道警からの受け入れ時に当事者の了承を得て加害状況が共有され、警察官は2か月に1度、クリニックを訪れ、加害者の様子を確認する。同クリニックの佐々木渉精神保健福祉士(39)は「警察官が入り口や途中でフォローしてもらえるので心強い」と話す。
一方、警察は治療を強制できないのが課題だ。昨年、道警が治療を呼びかけた加害者117人のうち、治療を受けたのは27人。警察庁によると、全国では882人のうち124人にとどまるという。道警は「加害者の家族に治療の重要性を伝えるなど粘り強く説得し、治療につなげたい」としている。
立命館大の広井亮一教授(司法臨床学)は「ストーカー加害者は依存性と攻撃性の両方を持っており、双方に対応するため警察と医療機関の協働が効果的だ」と意義を強調する一方で、「暴力や殺人にまで及ぶ恐れがある『ハイリスクストーカー』は治療を受けないことが多く、医療機関を受診するよう行政が促す仕組みをつくることが必要だ」と指摘している。
有罪判決の男性「治療で人生変わった」

「治療を受けたことで人生が変わった」。かつてストーカー規制法違反の罪で有罪判決を受けた30歳代男性はそう強調する。
男性は2014年春、交際していた女性から別れを告げられ、LINE(ライン)で「死ね」などと書いたメッセージを一日何十通も送るようになった。「相手に対する怒りを抑えられなかった」。警察から警告を2度受けても再び女性にメッセージを送り、同年10月に逮捕された。
起訴後、男性は入院し、条件反射制御法による治療を受けた。退院後は女性への怒りはなくなり、逮捕で職を失ったが再就職できた。「生きづらさを抱えながら生活する加害者は多い。専門の医療機関を受診してほしい」と話す。
被害者支援を行うNPO法人「ヒューマニティ」(東京)の小早川明子理事長によると、治療を終えた加害者約30人から再犯者は出ていないという。