横浜市鶴見区で1988年、金融業の夫婦が殺害された「鶴見事件」で強盗殺人罪に問われて死刑が確定し、10月に東京拘置所内で病死した高橋和利元死刑囚の弁護団は24日、妻の京子さん(87)を申立人として横浜地裁に第3次再審請求をした。
弁護団によると、2017年に申し立てた第2次再審請求は申立人の高橋元死刑囚の死亡に伴い11月に終了したため、第3次請求を決めた。第2次請求は裁判所が判断を示していないことから、証拠は引き継ぐ。確定判決が認定した凶器の形状と被害者の致命傷が矛盾する鑑定結果や、被害者の小切手の原本が発見されておらず他に事件を起こした人物がいると推認される証拠を提出した。
主任弁護人を務める野嶋真人弁護士は記者会見で「本人が亡くなることで関心がなくなることはあってはならない」と話した。
弁護団によると、被害者と取引関係があった高橋元死刑囚は事件の11日後に逮捕された。公判で室内にあった現金1200万円を持ち去ったことは認めたが、殺人については否認。判決は強盗殺人罪の成立を認め、死刑が確定した。【池田直】
妻「あんなことできる人じゃない」
「あの人はやってない。それは今も変わらず信じている」。高橋元死刑囚の妻京子さん(87)は毎日新聞の取材に、そう語った。
事件前、夫妻は小さな電気工事会社を営んでいた。経営は楽ではなかったが、「お金のことで言い争ったことはなかった」。1988年7月1日、平穏な生活が一変する。逮捕の一報を「驚きしかなかった」と振り返る。
同年11月から始まった横浜地裁での1審はすべて傍聴した。拘置所にいる夫と面会することもあったが、たわいないことを話した記憶しかない。いつか塀の外で会えると信じていたが、夫は死刑囚となり、獄中で亡くなった。87歳だった。無罪を信じる周囲の人とともに、再審を訴えてきた。
逮捕から33年の歳月が流れた。遺骨は自宅の棚の上に置かれ、時折線香を上げる。現場から現金を持ち去ったことは許されないと思っているが、殺人はしていないと今も信じている。「あんなことをできる人じゃない」。自宅に飾ってある夫婦の写真を見ながら京子さんはつぶやいた。【池田直】