点字ブロックは雪の下、通勤路一変 視覚障害者「迷子になる」

寒波で盛岡市内でも積雪があり、視覚に障害のある人にとって危険な雪道の季節が本格的に始まった。盛岡市は今冬、視覚障害者が安全に通行できるよう除雪基準を変更する取り組みを始めた。市内の除雪基準は降雪量10センチ超と定めているが、岩手県立盛岡視覚支援学校周辺の市道では試験的に5センチに引き下げる。視覚障害のある同校の教諭3人に学校周辺を案内してもらうと、雪道を歩く難しさが浮かび上がってきた。【安藤いく子】
「雪で点字ブロックが隠れてしまうと真っすぐ歩けなくなる。自分の向いている方向が分からなくなり、迷子になったような感覚だ」。同校教諭の蘇野辺隆尚(たかひさ)さん(44)は、この季節の通勤をそう表現する。足の裏で点字ブロックを感じながら歩き、通勤経路では塀など自分で決めた目標物を白杖(はくじょう)で触りながら進む。頼りにしていた点字ブロックなどが雪に埋まると、普段歩き慣れているはずの通勤路が一変する。
「通勤経路では元から点字ブロックがない道もあり、緊張のため息を止めて歯を食いしばって歩いている」と明かすのは同校教諭の高橋弘さん(52)だ。白杖をつきながら左右に行ったり来たりしているなど困っている障害者がいたら声をかけてほしいという。「道が凍っていても私たちは避けることができない。声をかけてもらうだけで安心できる」と訴える。
市では建設業者などに車道や歩道の除雪を委託し、基準を超えると業者が出動する。ただ、視覚障害者にとっては積雪が10センチに満たなくても危険なため、同校の生徒が暮らす寄宿舎からの通学路では地域住民や学校職員らが雪かきをしたり融雪剤をまいたりしている。
市の担当者は「少ない雪だと除雪機で雪をかけない場合もある。今季に5センチでも除雪できるか実践し、市内全域に広げるか検討する」としている。同校教諭のギミレ・チティズさん(49)は基準引き下げに感謝しながらも「学校から離れた駅やバス停から通学する生徒もいる。基準を引き下げる範囲を広げてほしい」と願う。