感染者の行動歴「帰省や親族と会食したケース多い」

岩手県と盛岡市は10日、新型コロナウイルスの感染者が12人確認されたと発表した。新規感染者が2桁に上るのは15日ぶりで、県内の累計感染者は429人となった。
市町村別では、盛岡市5人、一戸町3人、矢巾町、花巻市、北上市、久慈市が各1人。久慈市の女性会社員(50代)は、9日に感染が発表された盛岡市の女性会社員(20代)ら5人の親族。3日に県内の親族宅で会食していた。
9日に感染が発表された一戸町の自営業男性(50代)の関連では、同居する女性2人(20代、50代)のほか、昨年12月23日に県外から帰省した男性(20代)も感染が確認された。
県によると、感染者の行動歴には、帰省や親族と会食したケースが多いという。県は「年末年始に人の移動が増えたことも影響している。感染対策に注意を払ってほしい」と呼びかけている。

関西3府県、緊急宣言発令へ=13日軸、全国拡大には慎重―政府方針

政府は新型コロナウイルス感染が急拡大する大阪、京都、兵庫の3府県について、特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令する方向で最終調整に入った。13日の発令を想定している。ただ、全国への拡大には現時点で慎重だ。複数の政府関係者が11日、明らかにした。
年明け以降の感染状況や医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を踏まえ、3府県の知事が9日、政府に宣言発令を要請していた。
菅義偉首相は11日、加藤勝信官房長官、田村憲久厚生労働相、梶山弘志経済産業相、西村康稔経済再生担当相と首相公邸で会談。今後の対応について協議した。出席者の一人はこの後、3府県への宣言発令について「早めに出した方がいい」と語った。
政府は8日から2月7日までの措置として、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県を対象に宣言を発令。首相は7日の記者会見では関西圏への対象拡大に否定的だったが、10日のNHK番組で「必要であればすぐ対応できるよう準備している。もう数日状況を見る」と方針変更をにじませていた。
一方、愛知、岐阜両県も宣言発令を12日にも政府に共同で要請する方針。栃木県も要請を検討しており、今後さらに対象地域が拡大する可能性がある。ただ、政府高官は昨春のような全国一律の発令について「それはないだろう」と語った。
[時事通信社]

太平洋側、大雪警戒=交通乱れも、北陸は峠越す

冬型の気圧配置が緩みつつあるため、北陸の記録的な大雪は11日、峠を越えた。一方、日本の南海上を低気圧が進む影響で、西日本と東日本の太平洋側では同日夜から12日にかけて大雪となる所があり、東京23区などの平地でも積雪の可能性がある。
国土交通省と気象庁は11日、雪の降り方によっては交通への影響が懸念されるとし、不要不急の外出延期や自動車の冬タイヤ装着などを求めた。
新潟県警によると、同県では除雪作業中に用水路に転落したとみられる男性(66)など、大雪の影響で10、11日に計5人が死亡した。総務省消防庁によると、7日以降に福井県で3人、北海道と岩手、山形両県で各1人が死亡。11県で計249人が負傷した。
新潟県上越市の高田観測点では、11日午前8時までの72時間(3日間)の降雪量が1メートル78センチと観測記録を更新。この地点の積雪深は午後5時時点で2メートル29センチと、平年の545%に達した。
気象庁によると、12日正午までの24時間予想降雪量は多い所で、近畿と四国20センチ、中国15センチ、関東と東海、九州南部10センチ、九州北部5センチ。その後、13日正午にかけての同降雪量は多い所で東海10~20センチ、関東5~10センチと見込まれる。
[時事通信社]

中止、ウェブ、分割開催 判断分かれた成人式 着物業界悲鳴「宣言出すなら補償を」

「成人の日」の11日、緊急事態宣言の対象地域である首都圏の1都3県で、成人式の会場での開催を巡って自治体の判断が分かれた。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて中止やオンライン開催にする自治体が相次ぐ一方、横浜市や東京都杉並区などは実施に踏み切った。「式典があって良かった」「中止は仕方ない」――。新たな門出を迎えた新成人たちは社会を取り巻く状況に思いをはせた。【南茂芽育、宮島麻実、林田奈々】
終了後の会食自粛求める
全国の市区町村で最多となる約3万7000人が新成人となった横浜市は、2会場で8回に分けて式典を開いた。2020年7月、新型コロナの影響でいったんはオンライン開催を決めたが、開催を希望する新成人の声を受けて9日後に一転して会場開催に戻した。
会場の一つとなった横浜アリーナ(港北区)では、検温を受けた新成人らが1席ずつ間隔を空けて着席した。鯉渕信也教育長が「新成人の責任と節度ある行動を信じ、開催を決断した」と、帯状疱疹(ほうしん)のため入院した林文子市長の祝辞を代読した。式典は新成人の誓いなどを含めて15分に短縮し、終了後の会食の自粛を呼びかけた。
参加した同市青葉区の学生、永見大智さん(20)は「一生に一度の経験なので、感染対策をした上で来た。医学を学んでいるので、医療の大切さを学びながら新成人として役割を果たしていきたい」と話した。
東京都杉並区は23区の中で唯一、会場で式典を行った。実施回数をこれまでの倍の4回とし、国歌斉唱の際は声を出さないようにする対策を取った。あいさつに立った田中良区長は、危惧されているのは式そのものよりもその後の飲み会だとし、「私はあなたたちをまずは信頼したい。(式の後は)酒盛りを控えて家に帰り、今日まで見守り支えてくれた人に『ありがとう』と伝えて」と呼びかけた。
出席した大学2年、壇実(み)のりさん(19)は「中止になるかと思っていたけどうれしかった。責任を持って期待を裏切らないようにしたい」と話した。一方、大学2年の男性(20)は「1人暮らしの若者は気を引き締めるきっかけがなかなかない。(呼びかけを)聞かない人もいるかもしれない」と心配した
中止で写真撮影のみ「成人式は正直うらやましい」
神奈川県小田原市は6日に会場での実施を中止し、オンライン中継とすることを決めた。専門学校生、高野紗那さん(19)は美容院を予約済みで、式典が予定されていた10日に晴れ着姿となって写真を撮った。動画配信サイト「ユーチューブ」で出席者のいない式典がライブ中継されたが、「皆で見られるわけでもない」とさみしそうだった。感染リスクを考え、会場での式典中止を「やむを得ない」と話すが、実施する自治体もあるため「一生に一度の成人式に出られるのは正直うらやましい。小田原も延期できなかったんだろうか」との思いも抱えたという。
一方、東京都江戸川区の会社員の女性(20)は式典があっても出席しないと決め、6日に「成人式が開催されるのが嫌で仕方ないです。自分自身が感染を広げる主になるかと思うと行けません」とツイッターに投稿していた。同区は8日になってオンライン開催に変更した。女性は今年に入って病気で弟を失ったばかり。「マスクをすれば大丈夫という保証なんてない。これ以上家族を失いたくなかった」と語り、11日は自宅で過ごした。
着物レンタル半分キャンセル
着物レンタル会社からは悲鳴が上がった。東京・銀座の「着物興栄」は約30人から晴れ着をレンタルする予約があったが、6日時点で半分が取り消された。「客の都合によらないキャンセル」となるため、キャンセル料は発生しない。損害は約500万円に上る。成人式当日も「撮影のために着付けだけはしたい」と客が訪れるため、慶佐次真紀社長(41)は「人件費はかかるが、店を閉めることはできない」と話した。
着物業界にとって、成人式は大きな稼ぎ時でもある。時短営業に応じた飲食店には「協力金」が支払われる一方で、その他の業界には予定されていない。「緊急事態宣言を出すなら補償をしてほしい。行政の補助がなければ、業界はやっていけない」と危機感を募らせた。

国内で新たに4871人の感染確認 月曜日として過去最多 重症者は864人

新型コロナウイルスの感染者は11日、国内で新たに4871人が確認された。月曜日としては過去最多だった。クルーズ船の乗客乗員らを合わせた累計の感染者数は29万4461人、死者は48人増えて4128人となった。重症者数(11日午前0時現在)は前日比12人増の864人で、過去最多だった。
東京都の新規感染者は1219人で、月曜日としては先週(4日、884人)を上回って初めて1000人を超えた。都の基準で集計した重症者は、前日比3人増の131人だった。【まとめ・山田奈緒】

北海道庁でクラスター、職員10人が感染…本庁舎で業務

札幌市は11日、北海道庁で職員計10人の感染が確認され、クラスター(感染集団)に認定したと発表した。
市と道によると、10人はいずれも農政部に所属し、札幌市の本庁舎で業務に当たっていた。先月29日~今月7日、職員4人の感染が判明し、9、10日に同じ職場の31人を検査したところ、残る6人の感染がわかった。いずれもマスクの着用など感染防止対策は実施し、一般の来庁者とは接していないという。農政部は通常通り業務を続ける。

日本女子大付属中高に爆破予告 コロナ「隠蔽」と言い掛かり 神奈川県警が捜査

日本女子大付属中学・高校(川崎市多摩区西生田1)に2020年11月以降、爆破を予告するなどの手紙やメールが複数届いていることが、同校への取材で判明した。手紙やメールには、生徒が新型コロナウイルスに感染したとして「コロナを隠蔽(いんぺい)するな」と記されていた。多摩署は同じ人物が送ったとみて威力業務妨害容疑で捜査している。
同校などによると、11月28日に「コロナを隠蔽するな。無視すれば生徒の命なし」「中学と高校を1カ月以上閉鎖しなければ爆破する」などと書かれた封書が届いた。同日に通報を受けた捜査員が校内で危険物を捜索したが見つからなかった。
2日後の同30日、同校ホームページ(HP)の問い合わせフォームに似たような内容のメールが送られてきた。12月17日には「まだ懲りないのか、感染者の数を見て何も思わないのか」などと記された封書とメールが届いた。21年1月7日にも同じような内容のメールが送られてきたという。
同校を運営する学校法人・日本女子大学によると、学校関係者が新型コロナに感染した場合、保護者宛てに一斉メールで通知した上で、HPに「本学付属校園関係者の感染について」と題して、年齢や性別などの属性を伏せて公表している。「付属校園関係者」の感染は10、11月にそれぞれ1回ずつ公表されている。同大広報課は「個人が特定されない形で公開しており、全く隠蔽していない」としている。【洪香】

12日にも緊急宣言要請=愛知・岐阜両県

愛知県の大村秀章知事は11日の民放番組で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、12日にも岐阜県と共同で政府に対し、新型コロナ対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令を要請する方針を明らかにした。西村康稔経済再生担当相とオンラインで会談する方向で調整する。
現在、宣言は東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏1都3県が対象だが、9日には大阪、京都、兵庫の関西3府県知事が西村担当相に対し、宣言の発令を要請した。大村知事は、宣言の対象地域を東海地方にも拡大することにより、「県民市民のより強い行動変容をお願いしたい」と強調した。
これに関連し、岐阜県の古田肇知事は11日の記者会見で、愛知、三重両県と12日午後、オンラインによる知事会議を開催すると発表した。古田知事は「関西圏が(宣言要請の)手を挙げているが、愛知、岐阜はいろいろなデータを見ても(関西圏と)同様の状況にある」と指摘。経済的につながりの深い両県が連携して要請すると説明した。
[時事通信社]

京都市、急きょリモート会場設け成人式 収容率50%以下も周辺では滞留

「成人の日」の11日、京都市で「はたちを祝う記念式典」があった。約7300人の参加申し込みがあり、同市は新型コロナウイルス感染拡大防止のため急きょリモート会場も設けるなど、会場の分散化を徹底。しかし、会場前の道路では大勢の新成人が滞留し、課題も残ったようだ。
京都市はコロナ対策として会場を従来の市勧業館「みやこめっせ」(同市左京区)に加え、近接するロームシアター京都との2会場とした。更に国が1都3県に緊急事態宣言を発令し、京都府も関西3府県で同宣言発令を要請したことを受け、急きょリモート会場も設置。会場の収容率を宣言下でも国の基準(定員の50%以下)を満たす28~50%に設定した。入り口にはサーモグラフィーを設置し、スタッフが参加者一人ずつ体温を確認するなど、厳戒態勢が敷かれた。
式典で門川大作市長は「人生にはこれからさまざまな困難な待ち構えているが、困難を勉強の機会として真正面から取り組んでほしい」とエールを送った。同時に「会食は行かずにまっすぐ帰って」とも促した。
一方、みやこめっせとロームシアター京都が挟む二条通や隣接する岡崎公園では、電話をしながら友人を探したり、記念撮影をしたりするなど、多くの新成人であふれた。記念撮影時にマスクを外す人もいて、スタッフが拡声器で「マスク着用を」と呼びかける一幕もあった。
京都市東山区の女子大学生(20)は「直前で中止になるかもしれないなと思ったが、開催されてよかった」と安堵(あんど)した様子。付き添いで訪れた母親(51)は「コロナ禍で開催するのが正解かは分からないが、本人たちは気持ちも前向きに進めるのでは。成人式は二度とない機会なので、親としては開催はうれしい」と話した。【小田中大】

「産んだ責任としての殺人」我が子に手をかけた親たちの“リアル”な声

家庭内暴力、手に負えない子どもの問題行動に思い悩んだ末、愛するわが子を手にかける親がいる。なんとも痛ましい「産んだ責任としての殺人」とはーー。凶悪事件も含め、200件以上の殺人事件などの「加害者家族」を支援してきたNPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんが、レポートする。
自宅で長男を刺殺したとして殺人罪に問われ、一審・東京地裁で懲役6年の判決を言い渡された元農水事務次官の控訴審が12月15日、東京高裁で結審した。
被告人と妻は、長年、引きこもり状態だった長男の家庭内暴力に悩まされていた。それゆえ、被告人の境遇に同情する声も多いという。
「この事件はとても他人事とは思えませんでした。私も、わが子が多くの人を不幸にする前に、産んだ私が責任を取らなくてはと思い……。手をかけたんです」
信子(仮名・60代)の長男は、生まれたころから身体が弱く、入退院を繰り返していた。食べ物のアレルギーが多く、ほかの子どもたちのように活発に遊びまわることができず、しばしばいじめの対象になっていた。
「丈夫な身体に産んであげられなかった罪悪感から、家では甘やかしてしまったと思います」
信子は息子の欲しがるものはすべて買い与え、多額の小遣いも渡していた。息子は次第に金目当てに集まってくる悪い仲間とつるむようになっていった。中学では校則違反で信子は何度も学校から呼び出しを受け、高校に入ると万引きや暴走行為で警察から呼び出されるようになった。
息子がどれほど荒れようとも夫は仕事を言い訳に無関心。信子は誰にも相談できず、ひとりで問題を抱え込んでいた。
そんなある日、事件が起きた。警察が自宅にやってきて、世間を騒がせている高校生によるリンチ殺人の件で、息子から話を聞きたいのだという。信子は身体中、震えが止まらなかった。
息子は連日、警察署で事情を聴かれていた。信子は戻ってきた息子を問い詰めると、
「俺は何もやってないし、何も知らない」
そう言って信子を突き放すのだった。外をのぞくと、自宅の周りに人が集まり始めている。マスコミが動き出していた。
「息子があの事件の犯人だとしたら、家族は終わりだ」
信子はこの瞬間、息子への殺意が芽生えた。
「逮捕される前に一緒に死ねば……」
信子は包丁を手に取り、二階の息子の部屋へとおそるおそる進んでいった。息子の部屋の明かりはなかなか消えることはなく、実行できないまま数日が経過した。
結局、息子が事件に関与している証拠はなく、逮捕されることはなかった。
「それでも、息子のせいで人が死ぬ。その不安が頭から離れなかったんです」
そんな信子の心配は現実になった。息子はバイクで事故を起こし、同乗していた少女を死亡させてしまったのである。息子は重傷を負ったが命に別状はなかった。
「あのとき一緒に死んでいれば……」
信子は後悔していた。一家は自宅を売却して損害賠償の支払いに充て、その後、破産しなければならなかった。
ところが、退院して姿を見せに来た息子の態度はふてぶてしく、反省する様子など微塵もなかったのである。息子と目が合った瞬間、信子の理性は崩壊した。
「目がった瞬間、息子は笑ってたんです。なぜ、どうして人を死なせておいて笑うことなんかできるのかって怒りが込み上げてきました」
信子はその後の記憶はないという。包丁を持って息子を刺そうとした信子を夫と息子で必死に取り押さえていた。信子は、しばらく精神病院に入院した。
信子が息子の姿を目にしたのはこれが最後だった。息子はそれから行方が分からなくなった。数年後、都内のマンションで息子が亡くなっていたという知らせが届いた。自殺の可能性が高いという。
「ようやく解放された気がしました。息子が死んだという知らせが来るまで、私が産んだ責任として必ず私が殺さなければいけないという思いに囚われていましたから」
智子(仮名・30代)は、生活苦から生後6か月になるわが子を殺害し、自ら命を絶とうとしたが一命を取り留め、殺人罪で刑に服している。
「夫は一度も子どもに触れたことはありませんでした。もし、この子を残していったら虐待されるに違いないと、手をかけてしまったんです」
智子はかつて、経済力のあるキャリアウーマンだった。借金がかさみ、心中しなければならないほど追い詰められたのは結婚が原因である。婚活パーティーで知り合い結婚した夫はジャーナリストとは名ばかりのほとんど収入のない男性だった。ふたりは智子が所有するマンションで暮らし、家計はすべて智子の稼ぎで支えていた。夫は見栄っ張りで、高級車やゴルフの趣味に浪費をしていた。
智子は、子どもができれば夫も変わると期待をしたが、子どもが生まれてからがまさに「生き地獄」だった。自宅で仕事をしている夫は、子どもの泣き声がうるさいと怒鳴り、暴力を振るようになった。智子はうつ病になり、仕事を続けることもできなくなった。夫はこれまでと同じように贅沢(ぜいたく)な生活を続けている。智子はいつの間にか、死ぬことしか考えられなくなっていった。
「親には心配かけたくないと思い、相談できませんでした。友達にも恥ずかしくて言えませんでした。幸せなふりを続けてしまったんです」
いつの間にか、食料も手持ちの現金も底をついてしまった。夫は出張に出かけると行ったきり戻ってこない。
「ごめんね……」
智子はついに、お腹がすいて泣き出したわが子の首を絞め殺害した。その後、自ら手首を切って自殺を図った智子は、訪ねてきた姉に発見された。逮捕後すぐに、智子は夫から郵送されてきた離婚届を受け取りサインした。夫は一度たりとも面会に来ることはなかったという。
海外に比べ、殺人事件は非常に少ない日本だが、殺人事件に占める家族間殺人・心中事件の割合の高さは、家庭が必ずしも安心できる場所にはなっていないことを示している。
その背景には、犯罪のみならず、家族が他人に迷惑をかけた場合、家族が連帯責任を負うべきだという根強い思想が家族を追いつめているからだと考えている。
家族の問題は最後まで家族で責任を持つべきだと考えるならば、第三者に頼ることは許されず、社会で問題を共有するという発想には至らない。事件の背景を辿っていくと、重大事件に至る家族ほど事件が起きる直前は、他人に頼る力さえ尽きている。
問題が小さい段階で家族以外の適切な相談者を見つけておくことで、命が失われるリスクを減らすことはできるはずである。 殺人は最も重い犯罪であり、事件が起きた背景を理解することは重要だが安易に正当化されてはならない。たとえ問題の解決が見えなかったとしても、家族を殺す前に逃げて欲しい。
そして逃げられた家族を周囲がどのように支えていくかが社会の課題であり、「無責任」といってただ責め続けるだけならば、同様の事件を防ぐことはできない。
阿部恭子(あべ・きょうこ) NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)など。