27日公示の衆院選で全289小選挙区の擁立状況を分析したところ、連立政権を組む自民党と日本維新の会が85選挙区で激突する構図となった。多党化の流れを受け、野党6党も228選挙区で競合し、二大勢力の自民と中道改革連合による事実上の一騎打ちは28選挙区にとどまった。
自民、維新両党は「多党化の時代に入った」として候補者調整を原則として見送った。高市早苗首相は新たな連立枠組みの信を問いたいとしているが、与党同士でつぶし合う異例の展開となり、ちぐはぐさを指摘する声も上がりそうだ。
与党の競合区は維新のお膝元の関西を中心に大都市圏にひしめき、大阪で18、東京で11、兵庫で9、神奈川で6、愛知で5、埼玉で4、京都で3に上った。維新は競合区以外の129選挙区で自民候補を推薦した。
公認候補の競合区のほかにも、大阪2区で自民推薦の前職が維新新人と対決。兵庫2区では無所属で出馬した自民元市議が維新前職とぶつかる。
候補者調整の動きは野党でも限定的だった。立憲民主党と公明党が結成した中道は各党に連携を呼び掛けたが、国民民主党は基本的に応ぜず、立民と一定の協力関係を維持してきた共産党も「協力の土台が壊れた」として距離を置いた。
「所属国会議員5人以上」の政党要件を満たす中道、国民民主、共産、れいわ新選組、減税日本・ゆうこく連合、参政党の野党6党でみると、全小選挙区の8割近くでいずれかの党が競合。98選挙区で2党、100選挙区で3党、30選挙区で4党がぶつかる構図となった。連合の支援を受ける中道と国民民主は46選挙区で競い合う。
自民と中道が事実上の一騎打ちで争う28選挙区は北海道、埼玉、神奈川などが中心。これ以外に福井2区で自民支持の前職が中道前職とぶつかる。 [時事通信社]
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札幌遺体切断 父親の執行猶予判決、弁護団「ほぼ無罪だ」 札幌高裁
札幌市の繁華街・ススキノのホテルで2023年7月、会社員男性を殺害し頭部を切断したなどとして田村瑠奈被告(31)ら親子3人が殺人などの罪に問われた事件で、1審で有罪判決を受けた父、修被告(62)の控訴審判決が27日、札幌高裁(青沼潔裁判長)であった。死体遺棄、死体損壊の両ほう助罪で懲役1年4月、執行猶予4年とした札幌地裁判決(25年3月)を破棄し、死体損壊ほう助罪のみを認めて懲役1年、執行猶予3年を言い渡した。
修被告は四つのほう助罪で起訴され、地裁判決は死体遺棄と死体損壊の両ほう助罪を有罪とし、全面無罪を主張する弁護側と、検察側双方が控訴していた。
高裁判決は、瑠奈被告が自宅に頭部を運び込んだ時点で死体遺棄が終了し、その後に認識した修被告に「死体遺棄ほう助罪は成立する余地はない」としつつ、損壊行為をビデオ撮影したことは「瑠奈被告の充足感を満たすと認識」として死体損壊ほう助罪は認めた。
一方、殺人ほう助罪も改めて否定。殺害前に刃物などの道具を買い与えるなどしたが、「加害行為に及ぶ可能性を認識していたとは認定できない」と退けた。
弁護側は「ほぼ無罪だ。主張をしっかりと認定していただいた」と語り、札幌高検の上本哲司次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。【谷口拓未】
辺野古反対派が大敗=名護市長選の結果確定
25日投開票の沖縄県名護市長選は26日未明、結果が確定した。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設を容認する勢力の支援を受け、3選を果たした現職の渡具知武豊氏(64)が2万9票を獲得。事実上の一騎打ちとなった反対派新人で元市議の翁長久美子氏(69)は1万543票にとどまり、大差がついた。
市長選で移設の是非が争点となったのは8回目。容認、反対両派が推した候補が競り合ってきており、今回は異例の結果となった。渡具知氏も前回2022年は約5000票差、前々回18年は約3500票差だった。
渡具知氏は自民、日本維新の会、国民民主、公明各党の推薦を得た。移設の是非に触れず、国とのパイプをアピール。勝利を受け、記者団に「物価高騰対策を早めに実行していく」と強調した。
翁長氏は立憲民主、共産、社民各党が推薦した。移設阻止を掲げる「オール沖縄」勢力は9月の任期満了に伴う県知事選に向け、立て直しを迫られる。
投票率は過去最低の60.75%で、前回を7.57ポイント下回った。新人の伊波勝也氏(67)も立候補したが、228票だった。 [時事通信社]
強制送還、弁護士宛て2か月前の通知を廃止へ…逃亡発生受け厳格化
出入国在留管理庁は、外国人の強制送還に関するルールを見直す方針を固めた。不法滞在などの外国人を強制送還する際、代理人を務める弁護士に対して原則2か月前に送還予定時期を知らせる「弁護士通知」を今年中にも廃止する意向だ。弁護士側からの反発が予想されるが、通知によって外国人が送還前に逃亡する事案が発生しており、対応を厳格化する。
不法残留者や不法入国者を強制的に母国などに送還する強制送還は、出入国管理・難民認定法に基づいて行われている。2025年1月時点の不法残留者は約7万4800人。24年は約7600人が送還された。
強制送還の対象者は送還取り消しなどを求めて裁判を起こし、弁護士をつける場合が少なくない。一方、送還予定時期が分からないと、憲法が保障する「裁判を受ける権利」が損なわれるとの指摘があった。
民主党政権下の10年9月、当時の法務省入国管理局と日本弁護士連合会が、強制送還のルールに関する合意書を締結。入管当局が、原則2か月前に送還予定時期を「○月第○週」と、希望する弁護士に通知することになり、25年は少なくとも50件以上の通知が行われた。
だが関係者によると、近年は弊害が顕在化し、外国人が送還前に逃亡する事案が19年以降、少なくとも7件発生した。25年末時点で5件は逃亡中だった。送還予定時期がSNSで拡散されて入管窓口に抗議電話が寄せられたり、送還中止で飛行機代などのキャンセル料が約300万円に上ったりしたケースもあったという。
こうした状況を踏まえ、入管庁は日弁連とルールの見直しに向けた協議に入り、すでに弁護士通知を廃止する意向を伝えた。
日弁連の担当者は取材に「協議中かどうかはコメントできない」とした上で、「例外」として送還予定時期を直前に通知する例も相次いでいると指摘。「すでに合意違反の状況といえる。裁判を受ける権利の軽視で、人道的な観点からも問題だ。弁護士通知は今後も維持するべきだ」とした。
入管庁は、外国人本人に対し、送還の原則1か月前までに具体的な時期は明示せずに「1か月後以降に送還する」と通知する運用は続ける方針だ。
“最長寒波”ようやく終息 日本海側の雪は次第に収まる 真冬の寒さは継続
先週から長く続いている寒波により、日本海側を中心に記録的な大雪となった所があります。きょう26日(月)は冬型の気圧配置が西から次第に緩む予想で、寒波がようやく落ち着きそうです。真冬の寒さは続くものの、日本海側の雪は次第に収まる見込みです。積雪の多い地域では除雪作業を進められそうですが、作業中の事故には十分にお気をつけください。
■きょう26日(月)の全国天気 北海道~北陸の雪は午後には弱まるでしょう。太平洋側は大体晴れそうです。空気の乾燥が続きますので、火の元や火の取り扱いにご注意ください。関東は夜、にわか雨やにわか雪があるでしょう。また、九州は夜遅くに雨や雪の降る所がありそうです。
■きょう26日(月)の予想最高気温 日中の気温も10℃に届かない所が多く、真冬の寒さが続くでしょう。北海道や青森、盛岡は氷点下の予想です。晴れ間の出る東京都心も8℃と空気が冷たく感じられそうです。
【きょうの各地の予想最高気温】 札幌 :-3℃ 釧路 :-2℃ 青森 :-2℃ 盛岡 :-1℃ 仙台 :2℃ 新潟 :3℃ 長野 :1℃ 金沢 :3℃ 名古屋:7℃ 東京 :8℃ 大阪 :7℃ 岡山 :8℃ 広島 :8℃ 松江 :7℃ 高知 :10℃ 福岡 :9℃ 鹿児島:13℃ 那覇 :21℃
■大雪災害に警戒を続けて 雪が弱まったあとも油断せず、なだれや落雪に十分にお気をつけください。除雪作業中の事故を防ぐため、作業は2人以上で行うようにお願いします。また、路面の凍結によるスリップや歩行中の転倒にも注意が必要です。時間に余裕を持って行動するようにしてください。
■週後半は北海道~北陸で再び大雪のおそれ あす27日(火)朝にかけて、日本付近に居座っていた寒気は北に退きますが、週後半は再び強い寒気が流れ込む見通しです。北海道~北陸では再び大雪となるおそれがあります。雪への備えを続けてください。
東大汚職 元特任准教授を収賄容疑で書類送検 風俗店での接待同席か
東京大大学院の教授が共同研究相手の民間業者から高額接待を繰り返し受けたとされる汚職事件で、警視庁捜査2課は26日、教授の下で特任准教授をしていた男性医師(46)を収賄容疑で書類送検した。また、接待した側として一般社団法人「日本化粧品協会」(東京都文京区)の男性代表理事(52)も贈賄容疑で書類送検した。いずれも、教授と共にソープランドや高級クラブでの接待に同席していたとされる。
この事件では、大学院医学系研究科の佐藤伸一容疑者(62)が収賄容疑で逮捕された。警視庁などによると、共同研究は佐藤容疑者が実権を握り、形式上のトップには男性医師が就いていた。接待の具体的な調整役は男性医師が担い、代表理事とのやり取りをしていたという。
書類送検容疑は、男性医師が2023年3月~24年8月、東大と協会による共同研究の枠組み「社会連携講座」を設置、運営する見返りに、代表理事から東京・吉原のソープランドや銀座の高級クラブでおよそ190万円分の接待を受けたとしている。代表理事は、男性医師と佐藤容疑者に対し、計380万円分ほどの接待をした疑いがある。警視庁は認否を明らかにしていない。
代表理事が佐藤容疑者らを訴えた民事訴訟で、男性医師は「接待は負担だったが、佐藤容疑者に同席を命じられて断りづらかった」「接待を受けたことは反省すべき立場にあった」との見解を示している。
代表理事は提訴時の記者会見で「(教授から)接待を強要された」と主張する一方、「私も反省すべきところがある」と話していた。男性医師と代表理事は、東大の教員が「みなし公務員」に当たり、接待が賄賂に当たる可能性は認識していたという。【長屋美乃里】
国民・足立康史氏「直ちに削除しろ!」京大医学部卒モデルの出馬巡り「オジサンの趣味?」に激怒
国民民主党の足立康史参院議員(60)が25日夜、自身のX(旧ツイッター)を更新。同党公認の新人で衆院選(1月27日公示、2月8日投開票)大阪7区から立候補予定の今井優里氏(25)に寄せられた一部の声に怒りを見せた。
今井氏は大阪府出身で、京大医学部人間健康科学科を卒業。大学在学時からモデルとしても活動し、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が出演するNewsPicks「HORIE ONE」には進行役で出演していた。
今井氏は自身のXで出馬予定を表明すると、さまざまな反応が寄せられた。その中には一般ユーザーが「国民民主党 なんで大阪には 高学歴で綺麗で若いお姉さんばっかり出馬させるんだろ? オジサンの趣味?」などと今井氏や、昨年7月の参院選大阪選挙区で同党公認で出馬し、落選した渡辺莉央氏(当時30)の写真を添付したポストがあった。
足立氏は当該ポストを引用した上で「こういう批判は、本当に止めた方がいいです。若い女性だから、どうした?」と投げかけた。続けて「完璧な被選挙権を保持していますし、お二人とも、大阪生まれ、大阪育ち。大阪人をバカにしているのは、君だ」と指摘した上で、「直ちに削除しろ!」と訴えた。
一般ユーザーによる当該ポストは26日午前8時現在、削除はされていない。
今井氏は23日に自身のXで「はじめまして。大阪7区から立候補を予定している、今井ゆうりと申します」と前置きした上で、写真を公開。続けて「【負担の世代から、挑戦の世代へ】これは、今回の選挙に向けて、私が大切にしたいと決めた言葉です」と長文で意気込みをつづっていた。
大阪7区には、自民党の渡嘉敷奈緒美氏(63)、日本維新の会の奥下剛光氏(50=現職)らが立候補予定。
札幌で記録的な大雪鉄道・バス運休で7000人が新千歳空港で一夜明かす
北海道の新千歳空港では記録的な大雪で鉄道やバスが運休し、およそ7000人が空港で一夜を明かしました。
札幌ではきのう午後7時までの24時間で54センチの雪が降り、1月の観測記録を更新しました。新千歳空港では札幌方面に向かう鉄道やバスが運休となり、乗客らおよそ7000人が空港で一夜を明かしました。
札幌市民 「あと帰るだけなのに帰れなくて。寝てない」
JR北海道は、札幌圏の列車の運転再開は午後1時以降になるとしていて、影響は今後も続く見通しです。
スノーモービルで山に入り遭難していた約10人全員の無事確認 青森・平川市
青森県平川市でスノーモービルに乗り、山に入ったおよそ10人のグループの行方が分からなくなっていましたが、さきほど全員の無事が確認されました。
遭難していたのは、青森県内に住むとみられるおよそ10人の成人男性のグループで、きのう午後9時半ごろ、遭難した人の家族から「スノーモービルを乗りに行った人たちが帰ってこない」と警察に通報がありました。
警察によりますと、グループは平川市の山に入ったとみられていて、警察への通報の後に遭難者の1人から家族に「牧場にみんないる」と連絡がありました。
警察や消防などの捜索隊がけさ捜索を再開し、さきほど全員の無事が確認でき、これから下山するということです。
米兵3人が女子小学生を暴行、理由は「日本の女性は銃を持たないから」 届かない沖縄の怒り「人ごとなんだよ、東京で事件が起きてごらん」
1冊の分厚い年表がある。「6歳の女児が米兵に拉致、強姦された上、惨殺された由美子ちゃん事件」(1955年9月)、「高校2年の少女が学校から帰宅途中、米兵3人にナイフで脅され、公園内で強姦される」(1984年10月)…。太平洋戦争末期、1945年4月に米軍が沖縄本島に上陸してから発生した米兵による性犯罪を、沖縄の女性がまとめたものだ。 中でも、県民に大きな衝撃を与えたのは1995年、米兵3人が女子小学生を連れ去り暴行した事件だ。猛烈な抗議が広がり、米軍普天間飛行場(宜野湾市)返還の日米合意につながった。しかし、事件から30年以上が過ぎた今も普天間飛行場は返還されていない。米兵による事件は後を絶たず「受け入れ難い現状」は変わらない。性犯罪の被害者の支援者や米兵公判を見続けてきた女性たちは、尊厳を守るよう訴えている。(共同通信=石原聡美)
高里鈴代さんや宮城晴美さんらがまとめている年表「沖縄・米兵による女性への性犯罪」
▽頭を割られた衝撃 高里鈴代さん(85)は、沖縄で性暴力に遭った被害者の支援を続けてきた1人だ。1995年9月10日、那覇空港で、中国・北京での第4回世界女性会議から帰国した高里さんを待ち受けていたのは、衝撃的な知らせだった。 「こんなことが起きているのよ」。那覇空港に来た知人の女性が持っていた新聞の切り抜きには、沖縄県内で米兵3人に女子小学生が連れ去られ、暴行を受けたという記事。当初、事件の扱いは少女や周辺への配慮から決して大きくなかったが、高里さんは「頭を割られた」ような衝撃を受けた。
米兵の性犯罪根絶に向け開かれた意見交換会で発言する高里鈴代さん=2025年9月2日、沖縄県庁
▽広がる怒り 「少女への暴行は沖縄の全ての女性への人権侵害だ」。翌日の9月11日、当時の東門美津子副知事の部屋に女性団体が集まった後、高里さんは仲間と県庁で記者会見を開いた。高里さんが涙ながらに抗議した様子を地元紙が大きく報じると、県民の怒りに火が付いた。県内の女性団体は9月中に3日連続で集会を開き、翌10月には、宜野湾市で「県民総決起大会」が開催され、約8万5千人が参加した。 当時琉球大4年だった沖縄県議の仲村未央さんは、いてもたってもいられず、大学から友人たちと歩いて会場に向かって参加した。「行政の責任者として、一番大事な幼い子どもの尊厳を守ることができなかった」。当時の大田昌秀知事がそう謝罪した言葉は、そこにいた全ての大人の思いを代弁していると感じた。 「小さな島に基地の負担が押しつけられ、結果として一番弱い子どもを巻き込んでしまった。異常な環境だと痛感した。あれから30年たってもこの状況で、悔しい」
1995年10月、米兵による少女暴行事件に抗議し、約8万5千人が参加して開かれた県民総決起大会=沖縄県宜野湾市
▽救援センター設立 同じ1995年10月、高里さんは性犯罪被害者に寄り添う「強姦救援センター・沖縄(REICO)」を立ち上げ、代表となった。県民総決起大会で、被害に遭った女性たちが泣き寝入りしないよう「ひとりで悩まないで」と書いた小さなチラシを2000枚刷り、配布した。 「あなたは悪くない」と伝え続けたREICOは、2023年に活動を終えた。電話相談を受けた人数は、延べ4000人以上に上った。
▽目線に変化
1995年以前から、沖縄では米兵による性犯罪が頻発していた。高里さんや沖縄女性史家の宮城晴美さん(76)らが、米軍資料や新聞などに基づいてまとめたのが、冒頭の年表だ。 戦後、米軍の土地使用を巡る「島ぐるみ闘争(1956年)」や交通事故が引き金の「コザ暴動(1970年)」など、県内の反基地行動は何度もあった。ただ、宮城さんは、これらの反基地運動は「いずれも女性の尊厳を守るという視点ではなかった」と指摘する。 1995年の事件では、米兵の性暴力に対する目線に変化が生じた。「女性の自己責任とされがちだった被害が、米軍基地に起因する女性の人権問題として捉えられるようになった」と宮城さんは話す。
取材に応じる沖縄女性史家の宮城晴美さん=8月、那覇市
▽公平な裁判のため 1995年の事件で少女に暴行を加えた米兵3人の那覇地裁公判で、法廷通訳を務めた金城初美さん(78)は「米兵から少女への敬意を感じなかった」と振り返る。 金城さんは米軍普天間飛行場がある宜野湾市で生まれ育った。家に米兵が間借りして住むこともあり、米兵は身近な存在だった。 琉球大学に在学中、米国へ留学。日本に戻ってから父の知り合いに頼まれ、那覇地裁での法廷通訳を始めた。沖縄が本土に復帰した翌年、1973年のことだ。 「正確に訳することは公平な裁判につながり、被害を受けている沖縄の人の手助けになる」。通訳を引き受けることは「使命」だと感じた。 少女暴行事件の通訳も依頼された。いつも通り「冷静に、正確に」と心がけた。同時に、精神的に最もつらい通訳経験となった。
米兵による少女暴行事件の初公判が開かれた那覇地裁の法廷=1995年11月
▽息を飲むほどの侮辱 米兵の1人は犯行理由を「日本の女性は銃を持たないから」と供述。少女を「そんなに幼いと思わなかった」と話したという。金城さんは「なぜ何の落ち度もない少女が」とショックを受けた。「責任をお互いになすりつけ合っている」とも感じた。 「口に出すこともためらわれる」ような、少女を侮辱する発言が出た時は一瞬声が出ず、息をのみ込んでから訳した。 「被害者にとっては人生を左右する事件。どれほどの責任を感じているのか分からなかった」と語る。 米兵3人は起訴事実を大筋で認め、那覇地裁は1996年3月、懲役7年~6年6月の実刑判決を言い渡し、その後確定した。
▽受け入れ難い現状
金城さんは、2016年にうるま市で米軍属の男が女性を暴行し殺害した事件の公判も担当した。現在も、米兵事件での通訳を担っている。いまも米兵による事件が後を絶たず「沖縄で犠牲が引き継がれているような現状は受け入れ難い。本土の人には現実を知ってほしい。県民の立場ならどう思うか考えてほしい」と訴える。
インタビューに応じる法廷通訳人の金城初美さん=2025年8月20日、沖縄県浦添市
▽人ごと 米軍の基地負担は沖縄に偏ったままだ。在日米軍専用施設の約7割が国土面積約0・6%の沖縄に集中する。 米軍基地を抱える沖縄県内自治体の元首長の男性は、被害に遭った女性たちの話を何度も見聞きしてきた。海岸で、公民館の隣で、学校近くで―。「泣き寝入りが多い。被害者に『訴えましょう』と言っても『表に出ると良くないから』と断られる。補償があったとしても、すずめの涙。被害に遭った女性は、相当な苦悩だ」と語り、怒りをあらわにする。 「人ごとなんだよ、政府は。日本国民も『よそごと』『よその国で起きたこと』としか思っていないし、今でも変わらない。東京で事件が起きてごらん、どうなる。今の態度はおかしいんじゃないか、と言いたい」
▽7万筆超の署名
沖縄県の市民団体「フェミブリッジ沖縄」は2025年10月、相次ぐ米兵による性暴力事件に抗議する7万筆超の署名を、政府と与野党に提出した。署名は性暴力の根絶に加え、迅速な県への通報体制構築や、米軍に特権を許す日米地位協定の抜本的な改定などを求めている。 同じタイミングで、国会内で集会も開いた。集会には、約130人が参加。国に「性暴力から目を背けないでほしい」と訴え、再発防止策の強化を求めた。集会で仲村未央・沖縄県議は「県議会は何度となく地位協定改定を要求してきたが、一度たりとも指一本触れられていない」と憤った。
▽安保と人権の問題
本土復帰した1972年から2023年まで、沖縄県警が不同意性交などの疑いで検挙した米軍人・軍属やその家族は計159人に上る。被害は続く。高里鈴代さんはかつて、抗議活動中に突然「安保の問題を女性の問題に矮小化するな」と言われたことがあるという。高里さんはこう切り返した。「安保の問題であり、女性と人権の問題だ。国民一人一人の安全が守られていないのだから」 高里さんは事件が頻発する背景として、米側に特権を許す日米地位協定や、米軍の沖縄に対する差別意識があるとみる。 もう二度と犠牲者が生まれないように―。被害者と県民の願いが実現するまで、高里さんらは声を上げ続けている。