新型コロナウイルスのPCR検査結果の判明までに時間がかかるケースが珍しくない。記者の周りでも1週間近くかかったという声を聞くが、これでは発熱などの症状がほぼなくなったころにようやく結果が出ることになる。感染拡大で検査希望者が殺到しているのが理由だというのは分かるが、調べてみるとそれだけではなさそうだ。
「2週間ほど前から検査が逼迫(ひっぱく)して結果が戻ってくるまでに7、8日かかることもあった。陽性と判明しても、そこから保健所に連絡して、保健所から患者に容体確認の連絡がいくころには回復しているよ」
福岡市でコロナ患者の診察をするクリニックの院長はため息を漏らす。この医院では、発熱などの症状を訴える患者から唾液などの検体を採取して外部の検査機関で判定する。だが検査機関が感染者の急増で容量オーバーを起こしているとみられるという。
他の検査機関に依頼することは可能だが、話はそう簡単ではない。院長によれば、いつも依頼している検査機関であれば、陽性か陰性かの結果をクリニックの端末上で確認できるが、別の検査機関に依頼する場合はUSBメモリーで情報をやりとりする必要が生じる。伝票や検体を入れる容器も変えなければならない。院長は「職員にこれ以上余計な仕事は増やせない」とこぼす。
各地の検査機関は逼迫しているのか。感染の疑いがある人に保健所や医療機関の医師が必要と判断して行う「行政検査」を主に受注する大手検査会社の担当者は「『第6波』で検査数は確かに増えたが、能力を大幅に超える事態は起きていない」と話す。この会社は全国に複数の検査施設を持ち、ある地域で検査が逼迫しても検体を比較的余裕がある近くの施設に送って検査するという。「ただ、検査施設を複数持たない検査機関だと滞ることがあるかもしれない」
検査方法がPCR検査に偏りすぎているのも時間がかかる一因だ。PCR検査はウイルスの遺伝子配列で新型コロナかどうか確認する検査だが、それ以外にウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原)で確認する「抗原定性検査」と「抗原定量検査」がある。
抗原定性検査は薬局などでも手に入る簡易キットを使って手軽にできるメリットはあるが精度は落ちる。一方、専用の機器で分析する抗原定量検査はPCR検査より劣るとされるが、それでも十分に精度は高く判定時間もPCR検査より短い。全国の保健所や多くの検査会社で導入が進む。
だが、先ほどの大手検査会社の担当者は「抗原定量検査の枠は余裕があるが、PCR検査を希望する依頼が多い」と明かす。厚生労働省によると、1月24~30日の1週間の集計で、抗原定量検査の検査能力は全国で1日約9万5000件だが、実際の検査件数は1日当たり約2万5000件にすぎない。
東海大の宮地勇人教授(臨床検査学)は「東京オリンピックで関係者1万8000人を抗原定量検査で検査するなど精度は十分高い。それにもかかわらず簡易キットの抗原定性検査と混同しているためか利用が伸びないのは宝の持ち腐れだ。判定に時間がかかるPCR検査は件数が増えれば渋滞する。三つの検査をバランス良く使うことが感染制御や社会経済活動の維持に有効で、政府はそうなるよう自治体などに呼びかけるべきだ」と指摘する。【吉住遊】