栃木県内で減少傾向だった自動車盗難の件数が昨年、4年ぶりに増加に転じ、県警が警戒を呼びかけている。被害に遭ったものの、素早い110番や自身の捜索により、運良く愛車を取り戻すことができた宇都宮市の男性会社員(23)の例から、自動車盗難の手口や対策を探る。(奥山大輝)
男性は昨年1月、友人らと茨城県ひたちなか市の観光施設を訪れた際、駐車場に車を止めた。高卒で働きながら資金をためるなどして購入し、1年ほど前に納車されたばかりの日産の高級車だ。日頃から盗難には気をつけており、この日も警備員の詰め所の前に駐車し、ハンドルを取り外してトランクにしまい、施錠をしてその場を離れた。
しかし、昼食をとって約1時間後に戻ると、車はなかった。鍵穴を無理やりこじ開けたのか、現場にはドアの部品の一部が転がっていた。男性はすぐ110番し、駆け付けた警察官に事情を説明。その後、ツイッターで被害について投稿し、愛車の写真とともに「本当に大切にしている車。拡散よろしくお願いします」などと情報を求めた。
すると、投稿は瞬く間に拡散し、3500回以上リツイートされた。夜にはツイッターにダイレクトメッセージが届き、「水戸市のJR水戸駅前の駐車場でその車を見つけた」という情報が寄せられた。男性が駆け付けると、情報通り愛車はそこにあり、既に発見者の通報を受けた茨城県警の警察官が捜査を始めていた。
茨城県警によると、自動車盗の犯人が、盗んだ車を一時的に外で保管するのは珍しくない。GPSなどの発信機器がないか、拠点に運び込む前に調べるためだという。男性の例も迅速な通報や情報収集が功を奏したようだ。男性は車が戻ってきた後、新たな防犯機器を取り付けたといい、「二度と愛車は盗ませない」と誓う。
栃木県警生活安全企画課は「様々な盗難の手口が登場しているが、物理的な対策は今も有効だ」とし、タイヤロックやハンドルロックの取り付けなどの対策を勧める。ただ、男性のケースは、犯人が男性の駐車後の行動を観察し、ハンドルを外すところを確認した可能性もあり、それだけで必ず被害を防げるわけではないという。
車への不審行為を検知して警報音を発し、エンジンをかけられなくするカーセキュリティー機器を付けるなど、複数の対策を重ねることも必要となりそうだ。県警は「愛車を盗まれるのは何より残念なこと。特に狙われやすい高級車に乗っている人は、たとえ手間がかかっても対策を心がけてほしい」と呼びかけている。
昨年263件、施錠中被害…特定の高級車に狙いか
県警生活安全企画課によると、県内の自動車盗難の被害件数は、2017年の437件から年々減少し、20年には180件となったが、21年は一転、前年比73%増の311件と急増した。
21年の被害件数の8割を超える263件は、鍵がかかった状態で盗まれているが、無施錠のケースも50件近くあった。被害状況は、一般住宅や会社の駐車場に止めておいた車が、夜間に盗まれる例が多いという。
盗難後の車はどうなるのか。同課によると、かつては犯行グループが盗難車両を拠点で分解し、海外などに運んで売却するのが一般的だった。近年はトヨタのランドクルーザー、レクサスなど、特定の高級車を狙った犯行が相次いでおり、解体せずそのまま売却されている可能性もあるという。
今年に入っても被害は相次ぎ、1月には31件(暫定値)が確認された。県警は「鍵を差したまま、エンジンをかけたままで盗まれるケースもまだ多い。まずは基本的な対策をきちんと取ってほしい」と呼びかけている。