コロナ対策の認証店 熊本9割、隣の鹿児島3割 地域差の理由とは

新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底した飲食店に都道府県がお墨付きを与える第三者認証制度で、地域によって「認証店」の割合に差が出ている。熊本県は約9割の店が認証された一方、隣の鹿児島県は約3割にとどまる。感染拡大を防ぐ対策の実効性が問われる中で、地域差が生まれた理由とは。【吉川雄策、宗岡敬介、杣谷健太】
「認証店と非認証店で差が設けられた以上、認証を受けないと仕方ない」。熊本市中央区のスポーツバー「ゴーゴーバー」店主の田淵大さん(37)は、迷った末の決断を語った。
熊本県では1月23日から3回目の「まん延防止等重点措置」が適用された。店ではこれまでも消毒を徹底するなど独自の対策を続け、クラスター(感染者集団)の発生もない。しかし県は重点措置期間中、認証店には午後9時までの酒類提供を認めたため急いで申請し、2月に認証店になった。
店を開いても午後9時閉店では利益はほぼなく、1日の客足も4分の1程度にとどまるが、田淵さんは「(感染対策で距離を保つため)約30人の客席を半分にしなければならず悩んだが、酒を出せるのは大きく、常連客をつなぎ留めることにもつながれば」と話す。
熊本県は2021年6月から認証制度を始め、22年2月上旬には県内の飲食店約8000店のうち約7100店が認証店になった。制度の開始以降、県内の認証店でクラスターの発生はなく、県は「感染対策と経済の両立が一定程度図れる」と判断。従来は重点措置などの期間中、酒類提供の一律停止を求めたが、22年1月から認証店は「酒類提供して午後9時閉店」か「営業形態は非認証店と同じだが、協力金を増額」を選べるようにした。
一方、21年6月に認証制度を導入した鹿児島県は、重点措置が始まった1月27日以降、認証店には酒類提供停止などで協力金を上乗せしたため、2月8日までに626店が駆け込みで申請した。それでも県が実際に見回りなどで営業実態を確認できた1万485店のうち認証店は3265店(14日時点)にとどまる。
鹿児島県の担当者は「認証制度の周知不足もあると思う」と語るが、背景には要請に応じた場合に支給される県独自の補助金の差もある。熊本県ではパーティションなど衛生管理設備の購入で最大50万円(購入額の9割)を認証店に補助するが、鹿児島県では最大10万円(同10割)と少なく、申請自体も21年12月に打ち切った。
鹿児島市の歓楽街・天文館で飲食店を営む非認証店の男性は「20万~30万円を設備投資して認証を受けても、非認証店との営業時間の差は小さい。協力金は非認証店も受給できるので、メリットは感じない」と打ち明ける。
1月に熊本と同時に重点措置が適用となった宮崎県は、約7000店のうち認証店は約7割にあたる4639店(1日現在)。変異株「オミクロン株」の急拡大による第6波で、認証を申請する店は増えているが、店内の換気状況を調べる二酸化炭素濃度の測定器が、世界的な半導体不足で欠品。一部の認証作業に遅れが生じる事態も起きているという。
他県でも差は大きい。全国に先駆け20年6月に県独自の認証制度を始めた山梨県は、県内の飲食店の約98%が認証済み。逆に認証店が全体の3割程度と少ない島根県は「第6波で県が初めて重点措置の対象になったことで、ようやく認証のメリットを感じた店もある」と話す。
地方独立行政法人「大阪健康安全基盤研究所」の朝野(ともの)和典・理事長(感染制御学)は「一般的に店はインセンティブ(優遇措置)がないと動かない。都道府県ごとに認証や補助の仕組みが異なるのは悪いことではなく、科学的な評価を踏まえて良い部分を取り入れることも重要だ」と話している。