神奈川県大和市の自宅で2019年8月、小学1年の次男(当時7歳)を窒息死させたとして、母親の看護助手、上田綾乃容疑者(42)=同市西鶴間3=が殺人の疑いで逮捕された事件。上田容疑者の次男が、一時保護した県中央児相に上田容疑者からの暴力行為を明かすなど「虐待のサイン」を出していたのに、横浜家裁は施設入所の申し立てを却下していた。自宅に戻った次男は約9カ月後に死亡しており、児相の担当者は家裁の判断を「残念だった」と悔やんだ。
県によると、児相は医療機関からの情報提供で上田容疑者の長男と長女が乳児期に死亡した事実を把握し、「故意の可能性がある」とみて支援を始めた。12年10月、次男は自宅でチアノーゼの症状が出て救急搬送され、児相が一時保護。15年3月に次男は自宅に戻ったが、17年4月に当時1歳5カ月だった三男が急死し、児相は再び次男を一時保護した。施設入所措置が適当と判断し、上田容疑者と面接を重ねたが、同意を得られず、18年2月に児童福祉法に基づき横浜家裁に入所を申し立てた。
次男は2回目の一時保護の際に、上田容疑者について「投げ飛ばされて、口から血が出たことがあった」「怒るととても怖い時がある」と話したという。児相は身体的虐待があったとして、この発言も申し立ての資料に加えたが、家裁は「保護者が故意に何かをしたという根拠はない」などとして、同年10月に申し立てを却下した。
児相職員はその後も月に1~2回、訪問や面接を重ねたが、異変は見られなかった。事件の4日前にも親子と面接したが、「問題なく生活を送っている」と確認したという。大和綾瀬地域児相の高須正幸所長は「なかなか裏付けが取れず、状況がはっきりとわかるまでは家庭以外での養育が最善と進めてきた。(家裁の判断は)残念だった」と振り返った。【池田直】