ロシアのウクライナ侵攻を受け、日本で最も大きな影響を受けそうな人たちは沖縄の離島住民だろう。ロシアが侵攻で実利を得るようなことがあれば、今度は中国が、台湾や尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対して不穏な動きに出る危険性が高いからだ。
中国は尖閣諸島を「台湾に付属する島々」と称しているから、「台湾有事」はそのまま「尖閣有事」に転化する。
中国が台湾や尖閣を狙うとき、周辺離島の石垣島や宮古島の安全も保証されない。両島には容易に軍事施設に転用できる空港、港湾などのインフラが整備されている。中国も当然そこに目をつけてくるだろう。
沖縄県議会は2日、ロシアのウクライナ侵攻に対し、「国境に隣接する離島を抱え、広大な領海を有する本県が、不測の事態に巻き込まれることを強く懸念する」と早期停戦を求める決議を全会一致で採択した。台湾や尖閣に直接言及していないが、沖縄本島の政治家も、事態の危うさにようやく気づきつつあるということだろうか。
尖閣諸島を抱える石垣市はシビアだ。中山義隆市長は「国際社会の対応次第では、中国の台湾に対する行動が変わってくる」とロシアへの厳しい制裁を要望する。「中国の脅威は高まってきている。『台湾有事』の想定も常に持っていなければならない」と語った。
防衛省は陸上自衛隊の駐屯地を宮古島で2019年に開設し、石垣島でも来春の開設に向けて工事を進めている。地元反対派の抵抗があり、陸自配備はもともとスムーズに進んだ印象はなかった。
緊迫する国際情勢を見ると、石垣島の駐屯地開設はぎりぎりのタイミングで「何とか間に合いそう」という感じだ。
ただ、いまだに反基地ムードが強い沖縄本島の大手メディアは、離島の不安に鈍感だ。安倍晋三元首相が、米国の核兵器を共同運用する「核共有」をはじめ、「核抑止力の議論」を求めたのに対し、県紙は社説で「断じて拒否する」(琉球新報)、「言動は極めて危険だ」(沖縄タイムス)と猛反発した。
「台湾有事」はともかく、「今日のウクライナは明日の尖閣」と警鐘を鳴らす報道もほぼ皆無だ。多くの県民は根本的なところで、まだ今回の危機を理解していない。
核大国と対峙(たいじ)する以上、核抑止力の議論が必要なのは当然のことだ。議論するなら今しかないのも自明である。
離島住民としての私の立場から言えば、安全保障に関しては、いかなる議論も拒否しないし、無用な聖域も設けたくない。政府が小田原評定を続けた揚げ句、「目が覚めたら中国軍が上陸」なんて光景を見せつけられる羽目になるのは、結局私たちだからだ。
■仲新城誠(なかしんじょう・まこと) 1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。現在、同社編集主幹。同県のメディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に『「軍神」を忘れた沖縄』(閣文社)、『翁長知事と沖縄メディア 「反日・親中」タッグの暴走』(産経新聞出版)、『偏向の沖縄で「第三の新聞」を発行する』(同)など。