暴力団離脱、半数近くが組長や幹部…「シノギうまくいかず」「上納金払えない」

福岡県警の支援で指定暴力団を離脱した組長や組幹部が、昨年までの5年間で200人を超えた。取り締まりの強化によって資金源が減り、組の運営が立ち行かなくなるなどしたためで、離脱者全体の47%に上る。組長の離脱がそのまま組の解散につながったケースもある。
県警は2016年2月、組織犯罪対策課内に3人が専従する「社会復帰対策係」を設置するなど、組員の離脱と就労支援に力を入れてきた。取り調べの際には必ず離脱を促したり、離脱を申し出にくい組員に代わり、組幹部に脱退を認めるよう交渉したりしている。
警察庁の統計では、警察などが支援して離脱した全国の暴力団組員は、16~20年は約510~640人で推移している。
県警によると、県警が17~21年に離脱につなげた計480人のうち組長、組幹部は224人を占める。20年は離脱した83人のうち組長、組幹部が52人、21年は65人中33人と2年連続で半数を超えた。組長らは「シノギ(資金獲得活動)がうまくいかず収入が減った」「上納金が払えない」などと離脱の理由を話しているという。
昨年3月、県警に解散届を提出した指定暴力団道仁会(本部・福岡県久留米市)の傘下組織は、福岡県柳川市を拠点とし、元々20人以上の組員がいたが、県警の取り締まりの強化などで組員は年々減少。組長と組員数人だけになり、組長が解散を決意した。組長自身も県警の支援を受け、暴力団員を辞めた。組長は県警に対し、「将来や今後の生活のことを考えて解散する。暴力団には戻らない」と説明したという。ほかにも昨年、同様に組長と組員数人だけになり、組長自ら離脱して組をたたむケースが複数あったという。
県警によると、県内で活動する指定暴力団の勢力は、昨年末時点で1340人。8年連続過去最少となったが、離脱する組員の数は減少傾向にある。県警は一定程度の離脱が進み、暴力団の勢力自体が減っていることが要因とみているが、「今でも組に残っているのは帰属意識の高い組員たちで、この層を離脱させるため引き続き取り組む」(県警幹部)としている。
また、離脱後の就労支援には課題もある。受け入れ先となる「協賛企業」が昨年末時点で392社に増えて過去最多となったが、業種は建設業や運輸業が大半を占め、業種に偏りがあるのが現状だ。県警は、高齢となって体力が衰えた組員らの働き口確保のため、協賛企業を増やし、業種の幅を広げることを目指す。
「安定した収入、喜ばしい」

指定暴力団の元組幹部の男性(69)は福岡県警の支援を受け、2020年から県内の建設業者で働いている。男性は「社会の暴力団に対する風当たりは昔に比べ、確実に強くなっている。離脱して働く場を与えてもらえて本当に良かった」と語る。
男性が組員になったのは約50年前のことだ。飲食店からの「みかじめ料」やヤミ金融などで多い時で月に数百万を手にしていたが、35年ほど前に抗争していた組織の組員を射殺。20年以上服役した。
50歳代後半で出所し、組幹部になったものの、暴力団対策法で出所祝い金の贈与やみかじめ料の要求は禁じられるようになっており、以前のような羽振りの良い生活はできなくなった。貯金を取り崩したり、運転代行をしたりして何とか生活した。
同居していた叔母らに何度も説得され、離脱を決意。県警OBが務める社会復帰アドバイザーに相談に乗ってもらいながら、ダンプカーの運転手の職に就いた。体力的に厳しいと思う時もあるが、「一般市民として働き、安定した収入が入るのが喜ばしい」と、やりがいを感じているという。