「ウクライナの人々との連帯をさらに示すべく、第三国に避難した人の受け入れを進める。知人や親族が日本にいる人の受け入れを想定するが、それにとどまらず、人道的な観点から対応する」。 岸田文雄首相が3月2日の記者会見で言明したこの2つの文で、難民の受け入れに関して日本が他のG7加盟国と足並みを揃えたことを世界は確信したようだ。今回は、日本の世論はウクライナの人々の窮状に心から動かされ、彼らの一部を歓迎する気があるように見える。 難民受け入れは「パフォーマンス」 しかし、筆者が話を聞いた難民の専門家や、難民支援を手がけるNGO関係者は岸田首相の声明を非難している。疑わしいとするのはまだいいほうで、これまでの日本の難民政策がほかのG7加盟国と比べてひどかったことを忘れさせるための下手な「パフォーマンス」だとする厳しい声もあった。 これまでのところ、日本は約260万人とも言われるウクライナ人難民の29人しか受け入れていない。政府は人道的観点から積極的にウクライナ人を受け入れるとしているが、難民が日本に来ることも難民申請をすることも難しい現状を踏まえると、額面通りには受け取りがたい。そもそも日本はすべての難民申請の0.4%しか受け入れていないのだ(2019年)。 例えば、日本は1981年から2020年の40年間に3550人に難民認定か人道配慮の在留特別許可を与えているが、この数はフランスが昨年の24日間で与えたのと同数である。 ウクライナからの避難民のうち日本に来るのは限られているという指摘もある。昨年12月時点で日本に住んでいるウクライナ人は1915人に過ぎないため、岸田首相が言う「知人や親族」は非常に少ないはずだ。 そのうえ、EU諸国は日本とは比較にならないほどの好条件でウクライナ難民を受け入れようとしている。一橋大学の橋本直子准教授によると、「EUは避難民に受け入れ国の国民とほぼ同等の社会的経済的権利付きで当初1年の在留資格を保証しており、情勢次第では延長も可能だ」。 570人しか受け入れていない しかし、難民専門家らが声明を「たんなるパフォーマンス」と言った背景には、アフガニスタンの人々が置かれたひどい状況がある。昨年8月末にアフガニスタンがタリバン政権の手に落ちて以来、外国とつながりをもつ元アフガニスタン政府職員は明らかに新政権による報復の対象となっている。 これには、過去40年間に日本で学んだ約1400人のアフガニスタン人と、日本の外交団、JICA(国際協力機構)、さまざまなNGOで働いていた数千人の職員(警備員、通訳・翻訳者、運転手など)が含まれる。
「ウクライナの人々との連帯をさらに示すべく、第三国に避難した人の受け入れを進める。知人や親族が日本にいる人の受け入れを想定するが、それにとどまらず、人道的な観点から対応する」。
岸田文雄首相が3月2日の記者会見で言明したこの2つの文で、難民の受け入れに関して日本が他のG7加盟国と足並みを揃えたことを世界は確信したようだ。今回は、日本の世論はウクライナの人々の窮状に心から動かされ、彼らの一部を歓迎する気があるように見える。
難民受け入れは「パフォーマンス」
しかし、筆者が話を聞いた難民の専門家や、難民支援を手がけるNGO関係者は岸田首相の声明を非難している。疑わしいとするのはまだいいほうで、これまでの日本の難民政策がほかのG7加盟国と比べてひどかったことを忘れさせるための下手な「パフォーマンス」だとする厳しい声もあった。
これまでのところ、日本は約260万人とも言われるウクライナ人難民の29人しか受け入れていない。政府は人道的観点から積極的にウクライナ人を受け入れるとしているが、難民が日本に来ることも難民申請をすることも難しい現状を踏まえると、額面通りには受け取りがたい。そもそも日本はすべての難民申請の0.4%しか受け入れていないのだ(2019年)。
例えば、日本は1981年から2020年の40年間に3550人に難民認定か人道配慮の在留特別許可を与えているが、この数はフランスが昨年の24日間で与えたのと同数である。
ウクライナからの避難民のうち日本に来るのは限られているという指摘もある。昨年12月時点で日本に住んでいるウクライナ人は1915人に過ぎないため、岸田首相が言う「知人や親族」は非常に少ないはずだ。
そのうえ、EU諸国は日本とは比較にならないほどの好条件でウクライナ難民を受け入れようとしている。一橋大学の橋本直子准教授によると、「EUは避難民に受け入れ国の国民とほぼ同等の社会的経済的権利付きで当初1年の在留資格を保証しており、情勢次第では延長も可能だ」。
570人しか受け入れていない
しかし、難民専門家らが声明を「たんなるパフォーマンス」と言った背景には、アフガニスタンの人々が置かれたひどい状況がある。昨年8月末にアフガニスタンがタリバン政権の手に落ちて以来、外国とつながりをもつ元アフガニスタン政府職員は明らかに新政権による報復の対象となっている。
これには、過去40年間に日本で学んだ約1400人のアフガニスタン人と、日本の外交団、JICA(国際協力機構)、さまざまなNGOで働いていた数千人の職員(警備員、通訳・翻訳者、運転手など)が含まれる。