「成人」「未成年」入り交じる高3 民法改正で学校現場、試行錯誤

改正民法の施行で4月に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられると、高校3年生のクラスには「成人」と「未成年」が入り交じることになる。消費者被害に遭わないよう契約に関する知識を学んだり、政治や社会への関わり方を考えたりする場として、学校現場には大きな期待が寄せられているが、戸惑いの声もあり、試行錯誤が続く。
メルカリ社員からキャッシュレス決済学ぶ
「みなさんは次の学年になり、誕生日を迎えると成人です。これまで以上に注意しなければなりません」。2月、岩手県立山田高校(岩手県山田町)では、成人年齢の引き下げを目前に控え、2年生の「総合的な探究の時間」で、計画的なお金の使い方や契約の仕組みを学ぶ「金融教育」の授業が行われた。
約30人の生徒はオンライン会議システムで、講師を務めるフリーマーケットアプリ大手「メルカリ」社員の話に耳を傾けた。この日の題材はキャッシュレス決済。スマートフォン決済やクレジットカードの利用で思っていた以上の請求額になってしまったり、身に覚えのない利用履歴があったりした例を基に、注意点などをグループで話し合った。
授業に参加した木村拓夢さん(17)は「成人になるまでの期間が2年縮まり、高校生の時から責任が伴う。気持ちを切り替えなければ」と話した。近谷雄一郎教諭(49)は「これまで巻き込まれる心配のなかったトラブルに巻き込まれる可能性があることを、しっかり伝えていく必要がある」と語る。
4月から、18、19歳は1人で法律行為ができるようになる。ローンやスマホの契約や、クレジットカードを作ることが可能になる一方、悪徳商法のターゲットになるとの懸念があり、実践的な消費者教育を学校に求める流れが強まった。2018年に改定された高校の学習指導要領には、未成年と成人の法律上の責任の違いや、消費者保護の仕組みの指導などが盛り込まれた。
教員「大事だとわかっていても…」
ただ、学校現場は多忙だ。長時間労働の慢性化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、日々の健康チェックや濃厚接触者の追跡で事務作業が膨大になっている学校もある。ある教員は「頭では大事だと分かっているけれど、忙しすぎて成人年齢の引き下げに積極的に取り組む余裕はない」とため息をつく。
主権者教育も転機を迎えている。選挙権年齢は成人年齢に先立って16年に引き下げられた。高校では4月から必修科目「公共」が新設される。主体的に社会に参加する力を育成するのが狙いだ。
千葉県立国府台(こうのだい)高校の大塚功祐教諭(40)は、10年以上前から主権者教育に取り組む。21年は県知事選や衆院選の候補者に質問を送り、動画での回答を授業で見た。「自分たちも政治に参加できるという実感が大切。例えば、校内行事のあり方を話し合うのも主権者教育の一つ」と語る。
成人年齢引き下げと同時に、女性の婚姻年齢が現在の16歳以上から、男性と同じ18歳以上に統一される。4月からの授業では実際の婚姻届を見せ、成人すれば提出に保護者の同意が不要となることを切り口に、成人になるとはどういうことかを議論しようと検討中だ。「大人になると責任が生まれるけれど、可能性も広がる。ネガティブに捉えすぎないような教え方を考えている」と話す。【椋田佳代】