14日発行の夕刊フジで、ロシアの隣国、ジョージア出身の学者、ダヴィド・ゴギナシュヴィリ氏が、日本のテレビコメンテーターらのウクライナに対する「降伏しろ」発言に異を唱えた。名指しを避けたが、元大阪市長で弁護士の橋下徹氏らの発言を指すと拝察する。 本コラムではあえて実名を挙げて書き、橋下氏らの一連の発言の罪深さを改めて論じたい。 先月24日のロシア軍の侵攻開始から3週間、祖国防衛のため必死に戦うウクライナに対し、多くの日本国民は深い同情と敬意を寄せている。だが、橋下氏はじめとする日本の一部著名人はなぜか、在日ウクライナ人に執拗(しつよう)に、「降伏」や「妥協」を迫るような発言をしている。 発言の一端を紹介すると、まず3月3日、フジテレビ系の情報番組「めざまし8(エイト)」で、橋下氏はウクライナ出身の政治学者、グレンコ・アンドリー氏に向かい、次のように言っている。 「今、ウクライナは18歳から60歳まで男性を国外退避させないっていうのは、これは違うと思いますよ」「アンドリーさん、日本で生活してていいでしょう。未来が見えるじゃないですか。あと10年、20年、頑張りましょうよ。もう一回、そこからウクライナを立て直してもいいじゃないですか。(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)だっていつか死ぬんですから」 このときグレンコ氏は、ウクライナの現状を懸命に説明していた。その発言に割って入ってまで、橋下氏は「ウクライナ人は国外へ逃げろ(=つまり、国土をロシアに明け渡せ)」と言ったのである。 案の定、この橋下発言は大炎上した。後日、橋下氏は別の番組で、「全面降伏しろとは言っていない」と説明に努めたが、多くの視聴者が「降伏」の強要のように受け取って、違和感を覚えたことは間違いない。 橋下氏は翌週も、グレンコ氏に同じ理屈で食い下がり、6日にはやはりフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、自民党の高市早苗政調会長にも迫った。 このときは、「中国を取り込まないと(対露)制裁の効きが弱いともいわれている」と指摘し、「中国に頭を下げてでも、こっちに付いてもらう必要があるのでは」と問いかけ、高市氏はあきれ顔となっていた。 筆者が考える、一連の橋下発言の問題点の第1は、事実・史実に基づいていないことだ。 まず、ウクライナ人が、帝政ロシアとソ連の支配のもとで、どれほどの辛酸を嘗めてきたかを橋下氏はおそらく知らなかっただろう。歴史の一例を挙げると、世界的な穀倉地帯であるウクライナは、1930年代、スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた。こうした歴史を知っていたら、ウクライナ人に向かって安易にロシアの軍門に下れと言えるはずがない。
14日発行の夕刊フジで、ロシアの隣国、ジョージア出身の学者、ダヴィド・ゴギナシュヴィリ氏が、日本のテレビコメンテーターらのウクライナに対する「降伏しろ」発言に異を唱えた。名指しを避けたが、元大阪市長で弁護士の橋下徹氏らの発言を指すと拝察する。
本コラムではあえて実名を挙げて書き、橋下氏らの一連の発言の罪深さを改めて論じたい。
先月24日のロシア軍の侵攻開始から3週間、祖国防衛のため必死に戦うウクライナに対し、多くの日本国民は深い同情と敬意を寄せている。だが、橋下氏はじめとする日本の一部著名人はなぜか、在日ウクライナ人に執拗(しつよう)に、「降伏」や「妥協」を迫るような発言をしている。
発言の一端を紹介すると、まず3月3日、フジテレビ系の情報番組「めざまし8(エイト)」で、橋下氏はウクライナ出身の政治学者、グレンコ・アンドリー氏に向かい、次のように言っている。
「今、ウクライナは18歳から60歳まで男性を国外退避させないっていうのは、これは違うと思いますよ」「アンドリーさん、日本で生活してていいでしょう。未来が見えるじゃないですか。あと10年、20年、頑張りましょうよ。もう一回、そこからウクライナを立て直してもいいじゃないですか。(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)だっていつか死ぬんですから」
このときグレンコ氏は、ウクライナの現状を懸命に説明していた。その発言に割って入ってまで、橋下氏は「ウクライナ人は国外へ逃げろ(=つまり、国土をロシアに明け渡せ)」と言ったのである。
案の定、この橋下発言は大炎上した。後日、橋下氏は別の番組で、「全面降伏しろとは言っていない」と説明に努めたが、多くの視聴者が「降伏」の強要のように受け取って、違和感を覚えたことは間違いない。
橋下氏は翌週も、グレンコ氏に同じ理屈で食い下がり、6日にはやはりフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、自民党の高市早苗政調会長にも迫った。
このときは、「中国を取り込まないと(対露)制裁の効きが弱いともいわれている」と指摘し、「中国に頭を下げてでも、こっちに付いてもらう必要があるのでは」と問いかけ、高市氏はあきれ顔となっていた。
筆者が考える、一連の橋下発言の問題点の第1は、事実・史実に基づいていないことだ。
まず、ウクライナ人が、帝政ロシアとソ連の支配のもとで、どれほどの辛酸を嘗めてきたかを橋下氏はおそらく知らなかっただろう。歴史の一例を挙げると、世界的な穀倉地帯であるウクライナは、1930年代、スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた。こうした歴史を知っていたら、ウクライナ人に向かって安易にロシアの軍門に下れと言えるはずがない。