北九州市立総合体育館(八幡東区)で点検作業などに当たり、肺がんを発症して死亡した男性(当時78歳)の遺族が、アスベスト(石綿)対策を怠ったのが原因だとして市と勤務先のビルメンテナンス会社に損害賠償を求めた訴訟で、市は5日、市と会社に計2580万円の支払いを命じた福岡高裁判決を受け入れ、上告を断念したと発表した。会社側が上告しなければ高裁判決が確定する。
北橋健治市長は「最近の石綿関連の裁判例や、訴訟の長期化による遺族へのさらなる負担などを総合的に勘案した。主張が認められず残念ではあるが、今回の判決を重く受け止めたい」とのコメントを出した。男性の元勤務先の「太平ビルサービス」(東京)は「上告期限までに結論を出す」としている。
高裁判決は、男性が働き始めた1990年時点で体育館は安全性を欠いており、通常予想される作業過程で粉じんを吸ったのは施設の設置・管理側の責任と認定していた。
高裁判決によると、死亡した男性は北九州市の二見修夫(のぶたか)さん。太平ビルサービスの社員として90年から体育館に勤務し、現場管理責任者として設備管理や点検などをしていた。体育館の建材には複数箇所で石綿が使われており、二見さんは2005年に肺がんの手術を受けた後に退職し、13年に死亡した。
15年、遺族が市と会社側に計3465万円の損害賠償を求めて提訴。福岡地裁は20年に計2580万円の支払いを命じた。市と会社側は控訴したが、福岡高裁は3月24日、福岡地裁判決を支持して市と会社側の控訴を棄却した。判決が確定すれば、遅延損害金を含めた賠償額は3600万円超になる見通し。
弁護団によると、地裁判決は石綿が含まれる公共施設について自治体の管理責任を認めた全国初の判決だった。【成松秋穂】