宮城県石巻市の水産加工会社で働いていたベトナム人技能実習生3人が、外国人技能実習制度を監督する「外国人技能実習機構」仙台事務所から労働組合の脱退を促されたとして、組合は5日、「労働基本権の侵害に当たる」と同事務所に理由の説明などを求める申し入れをした。3人は会社から退職を強要され、助けを求めて組合に加入していた。同日、記者会見した実習生の一人は「最初は機構に期待していたが、がっかりした。私たちは日本の法律に従って長く日本で働きたい」と訴えた。
3人は、20~30代でいずれも女性。同社には労働組合がなく、今年2月、個人で加盟できる合同労働組合「仙台けやきユニオン」(仙台市)に入った。
組合によると、3人は2019年に来日して同社に勤務していたが、上司の叱責に反論したことをきっかけに、22年2月に退職を強要されたという。復職を求めたが拒否され、石巻市内の支援者のシェルターに住まいを移した。
退職5日後、3人が機構に相談すると、担当者から「あなたたちにも悪いところがある」として、会社に謝罪の手紙を書くよう求められた。手紙は、来日を仲介した監理団体を通じて会社側に渡すことになったが、監理団体は「中身に誠意がない」として受け渡しを拒否。困った3人は、知人の紹介で組合に加入した。
「組合抜けることが話し合いの条件」
3月1日、3人が機構の担当者と面談した際、組合のメンバーが同席していない場で「『組合を抜けることが話し合いの条件だ』と会社は言っている」と伝えられたという。機構からは「脱退するか回答を下さい。できるだけ早く返事を」などと、脱退を促していると受け取れるメールが2度送られてきた。
その後、会社は組合との団体交渉に応じ、2年間で約40万円ずつの賃金未払いがあったことなどを認めたという。一方、組合を脱退するよう伝えたことはないとした。
組合によると、5日の申し入れで機構はメールの送信を認め、「会社の主張を伝えただけ」と説明したという。仙台けやきユニオンの森進生(しんせい)代表(32)は「『権利の主張は一切するな』と機構が求めたと捉えられる」と憤る。
機構は17年、悪質な監理団体や受け入れ企業への指導を強化したり、実習生を保護したりするため、国が設立した。実習生問題に詳しい指宿(いぶすき)昭一弁護士は「労働組合への加入は、憲法で保障された労働者の権利で基本的人権の一つ。それが否定されるなら、機構が制度を適切化するという前提が完全に崩れる」と批判した。機構仙台事務所は取材に「個別の事案については回答できない」としている。【平家勇大】