和歌山IR 知事肝いり事業に自民が「ノー」を突きつけた理由とは

カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を巡り、和歌山県議会は20日、国への区域整備計画の申請を反対多数で否決した。「地域活性化の起爆剤」として期待され、4期目の仁坂吉伸知事が主導した肝いり事業だったが、誘致を後押ししてきた最大会派・自民からも事業者の資金計画などを不安視する声が相次ぎ、波乱の結末を迎えた。
「最大の起爆剤を取られ、次なる成長因子を失った」。閉会後、記者団の取材に応じた仁坂知事は「国に提出しても恥ずかしくない段階まで仕上げたつもりだったが、時間が足りなかった。痛恨の極みだ」と無念さをにじませた。
計画では、和歌山市の人工島に2027年秋ごろの開業を目指し、30年度にはIR区域の来訪者数を約650万人、経済波及効果を約3500億円と見込んでいた。人口減少で経済規模が縮小する県内で、初期投資が4700億円に上る巨大事業とあって、推進派からは新規雇用や観光客の増加など経済再生の切り札として期待を集めた。
しかし、事業者に決まったクレアベストニームベンチャーズ(東京都)の資金調達計画の不透明さが県議会で指摘され、計画についての住民説明会も延期されるなど、県の申請に向けた動きは迷走を続けた。事業者公募には当初、同社を含む2社が応募したが、県の事業者選定委員会で評価を得た別の社が21年5月、新型コロナウイルス禍を理由に撤退、最終的に同社が選ばれた。しかし、4700億円の7割を銀行などから借り入れる計画で、出資の確約が得られているのかを尋ねる議員らに対し、「出資は十分集まる見込みで、計画に自信を持っている」(同社)との説明に終始。出資元の企業は海外の事業者が大半を占めたほか、出資元や資金計画を示した県も詳しい融資内容には触れず、推進派議員からも「審査のしようがない」との批判が相次いだ。
森礼子議長(自民)は20日、否決に至った判断について「最後まで計画の不透明さが拭えず、新型コロナの影響で情勢が不安定になったことも要因ではないか」と語った。
賛否が割れたのは、最大会派の自民(27人)が党議拘束をかけずに採決に臨んだためだ。賛成した川畑哲哉議員(自民)は「和歌山を活性化させるアイデアの卵だったが、育てきれなかった」と述べ、反対票を投じた冨安民浩議員(同)は「IR自体には賛成だが、資金計画が生煮えだった」と振り返った。
12月に任期満了を迎える仁坂知事は、知事選への態度を明らかにしていない。これまで支援を受けてきた最大会派が今回、肝いり政策に「ノー」を突き付けた形となり、知事の求心力低下は避けられないとの見方もある。ある自民県議は、IR計画案を巡る攻防が次期知事選と結び付けられる可能性について、「そう見られても仕方がない」と話し、別の県議も「政局と政策がごちゃ混ぜになった面もあった」と否定しなかった。
県は誘致活動を本格化させた16年以降、人件費を除く広報や事業者の調査などに計4億2000万円を投じてきた。あるベテラン県議は「IRなんかに期待せざるを得ないほど衰退している地方の現実こそが問題だ」と吐き捨てるように言い、議場を後にした。【山口智】