2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、公職選挙法違反に問われた首長や議員の辞職などに伴う広島県内の選挙にかかる経費が、計約13億2000万円(予算段階含む)に上ることが、県選管などへの取材でわかった。当選後の任期が約1年しかない4件の補欠選挙でも2億円超かかる。民主主義に必要な経費とはいえ、「政治とカネ」が問題となった事件のあおりで、想定外の出費が相次いでいる。(落合宏美、森谷達也)
事件を巡っては、県内で20年5月~今年3月に計6件の選挙が実施された。今月15日の県議山県郡選挙区の補欠選挙(欠員1)は無投票となり、24日には広島市議安佐北区選挙区補選(同2)が投開票される。
県選管などによると、経費が最も高額なのは、河井案里元被告(48)(有罪確定)の当選無効に伴う21年4月の参院選広島選挙区の再選挙。投開票所やポスター掲示板の設置が県内全域に及び、人件費も含めて約10億4000万円が費やされた。
案里元被告と、河井克行元法相(59)(実刑確定)側から現金を受領した首長や議員の辞職に伴う選挙経費は、約8900万~約850万円。無投票の山県郡選挙区補選でも、ポスター掲示板の設置委託などで約2000万円の経費が見込まれている。
補選は、投開票を同じ日にできれば経費を削減できた可能性が高いが、議員の辞職が略式起訴される前後の今年2~3月にばらついたため、日程は個別に設定せざるを得なかったという。
有権者からは不満の声も聞かれる。補選が予定される安佐北区の男性(82)は「任期がわずかな議員の選挙に、多額の税金を投じる意義を感じない。その予算は街づくりなどに回してほしかった」と憤る。
岩井奉信・日本大名誉教授(政治学)の話「政治家の不祥事で多額の税金が使われることに納得できない心情は理解できるが、欠員を補充する選挙は『民主主義のコスト』として欠かせない。有権者は事件を教訓に、候補者の資質を見極めて投票するよう心がけてほしい」
現金の趣旨など12人争う見通し
事件を巡り、検察当局は元法相側から現金を受領し、公職選挙法違反(被買収)容疑で告発された議員ら100人を不起訴としたが、検察審査会が「起訴相当」を議決したことを受け、3月に計25人を略式起訴した。
その後、県内の各簡裁が略式命令を出し、命令を不服として正式裁判を請求した3人を除く22人の有罪が今月13日までに確定した。22人は、公民権(選挙権と被選挙権)が5年間停止となった。
地裁では今後、現金受領の違法性を否定するなどして正式起訴された9人を含む計12人が、公判で現金の趣旨などを争う見通し。