たばこか、ネズミか… 旦過市場火災、特定されない出火原因

北九州市小倉北区の旦過(たんが)市場で19日未明に起きた大規模な火災から、26日で1週間を迎えた。福岡県警と市消防局は実況見分の結果などから、市場に隣接する「新旦過横丁」の飲食店内から出火したとの見方を強めているが、出火原因は現時点で特定に至っていない。現場に燃え残った物証は少なく捜査の壁となっているが、県警は複数の店舗関係者への聴取を重ねるなど捜査を進めている。
関係者によると、火元とほぼ特定された飲食店は2階建て。1階に数人が座れるカウンター席とトイレ、2階にもカウンター席があり、ダーツを楽しめるスペースもあった。火災直前の18日夜から翌19日未明までは、アルバイトの男性が1人で勤務。関係者から「店が燃えている」と連絡を受け、オーナーの男性が午前3時ごろに駆け付けると、初期消火で対応できないほど激しく炎上していた。
捜査関係者によると、出火原因について、放火の疑いを示す形跡は現時点で見つかっていない。一方、複数の関係者から、失火と漏電の両面の可能性を疑わせる供述が出ている。
失火の原因の一つとして浮上しているのは、店内でのたばこの不始末だ。常連客の一人は「店では酒などの飲み物だけを提供し、火を使う食事はメニューになかったが、店員も客も喫煙者が多かった」と振り返る。店の従業員からも「たばこの不始末が原因かもしれない」などと話が出ており、県警が確認を進めている。
一方、漏電の可能性を指摘する声もある。関係者によると以前、店内を改装した際に電気配線をネズミにかじられたような跡が見つかっていたらしい。オーナーの男性は漏電を心配し、常連客らに不安を漏らしていたという。
ただ、いずれも供述を裏付ける物証は見つかっていない。県警は出火原因の特定に向け、慎重に捜査を進めている。【林大樹、佐藤緑平】