女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた、マスコミ業界の“体質”

細田博之衆院議長の「セクハラ」問題。週刊文春が2週にわたり報道した。
流れをおさらいする。まず5月19日発売の週刊文春が『細田博之議長 女性記者に深夜に「今から家に来ないか」』という記事を掲載。
大勢の政治部記者から文春に“告発”が寄せられたとし、細田氏が過去に複数の女性記者らにセクハラ発言を繰り返していたと報道。たとえば女性記者が細田氏に取材をすると「添い寝をしたら教えてあげる」と言われたという話が“常識”のように記者たちの間に広まっているという。
実際に文春が被害に遭っていたといわれるA記者に話を聞くと「無かったと言えば、嘘になりますね」というコメントが。さらにB記者は「深夜に本人から『今から来ないか?』」と電話がかかってきた。断るわけにもいかず、足を運びました。自宅に呼ばれたのは、私だけではないと聞きます」と証言。
こうした話は本当なのか文春が細田事務所に事実関係を尋ねたところ、期日までに回答が無かった。しかし報道後に細田氏は「事実無根」と抗議。
すると翌週の週刊文春(5月26日発売号)で、細田セクハラ問題の第2弾を報じたのだ。タイトルと見出しはこれ。
〈「うちに来て」細田衆院議長の嘘を暴く「セクハラ記録」
・女性記者たちの告発「二人きりで会いたい」「愛してる」 ・党女性職員が周囲に嘆いた「お尻を触られた」 ・最も狙われた女性記者が漏らした「文春はほぼ正しい」 ・カードゲーム仲間人妻の告白「抱きしめたいと言われ…」〉
どれを読んでもギョッとする。細田氏はこの報道に対し、改めて抗議する文書を出し、「通常国会閉会後、訴訟も視野に入れて検討したい」などと真っ向から反論した。
ここまでが現時点の流れである。
「最も狙われている」女性記者の回答
さて、細田氏とは別に、私にはどうしても気になる点があったのです。それは取材する記者の側のことだ。
記事の後半に「H記者」が登場している。多数の記者から、細田氏に「最も狙われている」と言われていた女性記者である。
以前からH記者は国会議員のセクハラ発言に強い問題意識を持ち「女性記者は多かれ少なかれ経験している。被害が出た時に担当を外せば解決する問題ではない」と話していたという。前週の文春記事についても「文春はしっかり取材している。記事の内容はほぼ正しい」などと周囲に語っていた。
そんななか文春がH記者に事実確認のために電話をした。ここでH記者から出た言葉は、
「それについては即答できる状況にないんです」「考える時間も必要なので、またご連絡させて下さい」
というもの。
翌日、H記者から文春に電話があった。その内容は「やはり今、お答えできることはありません……」という“回答”だった。
彼女たちが“告発”できない理由
記事では細田氏の「セクハラ記録」を提供した人物が次のように解説している。
「大手マスコミは、自社の女性記者が細田氏から受けたセクハラ発言を把握しているはずです。ただ、彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」
この「解説」を何度も読み返してしまった。恐ろしいことが書かれているではないか。
セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う。
これは「マスコミ論」でもある。そう思って今回の細田氏のセクハラ疑惑をめぐる報道を新聞各紙で確認するとサラッとしている印象を受ける。
朝日新聞は社説で『細田氏の言動 衆院議長の資質欠く』(5月28日)と書いた。
《女性記者らに対するセクハラの指摘に対し、説明責任を果たそうとしない。これでは、議長の資質に欠けるというほかなく、国会に対する国民の信頼をも損ないかねない。》
確かにそうなのだが、まず自社の政治部記者に詳しく尋ねたらどうなのだろう。そのほうが何か新事実や新証言が出てくるのではないか? 「野党は、引き続き追及する構えだ」(5月27日)とも書いているが、どこか他人事である。でも、実は政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは? 私はいま朝日を例に挙げたが、ほかの新聞社やテレビ局も同じだ。
「女性の番記者を付けている社が目立ちます」
「細田氏の女性好きは昔から有名です。(略)『細田氏は女性にしか話さない』と言われ、女性の番記者を付けている社が目立ちます」(ベテラン政治記者、週刊文春5月19日発売号)
私は政治面によくある「関係者」「党幹部」「重鎮」など、匿名だからこそ言えるコメントを読むのも好きだ。役に立つと思っている。しかし女性記者がパワハラやセクハラに遭っても言いだせない上で成立するものなら、私も楽しんではいられない。
いやいや、取材はそれだけじゃないよ、ちゃんとやってるよ、と言うなら今回の「政治家のセクハラと取材者」の問題を取り上げてほしい。私は嫌味や皮肉で言ってるのではなくマスコミ内部の姿勢を見たいのです。
今回の件で2018年の「財務省セクハラ」問題を思い出した人も多いだろう。女性記者にセクハラ発言を繰り返したと報じられて財務省事務次官・福田淳一氏が辞任した件。あれも発端は週刊誌報道だった。あのときは「週刊新潮」で、今回は「週刊文春」。女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。
細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある。
(プチ鹿島)