差し戻し前の1審横浜地裁判決から約3年半を経て、再び「懲役18年」という同じ結論が示された東名あおり運転死傷事故の差し戻し審判決。地裁の訴訟指揮が弁護側に対する「不意打ち」だったとして審理が差し戻されるという異例の経過をたどったが、裁判官が危険運転致死傷罪の適用に慎重な姿勢を取ったことが〝空転〟を招いたといえる。
一連の公判では、高速道路上で繰り返されたあおり運転と、その後に被害者が車を停止させたことで起きた死傷事故との因果関係が問われた。
自動車運転処罰法は、飲酒運転や高速運転に加え、あおり運転も対象にしていたが、加害者側が重大事故につながるスピードで走行していることが構成要件だった。今回の事故では、被告は車を停車させており、危険運転に当たるのかが注目された。
差し戻し前の1審横浜地裁では、公判前整理手続きで裁判官が「因果関係を認めれば、危険運転致死傷罪の解釈を弛緩(しかん)させる」とする見解を表明。同罪が成立しないとの判断を検察側・弁護側双方に示した。
このため検察側は、同罪に加えて被害者の車を高速道路上に停車させ、逃げられなくした行為は監禁致死傷罪に当たるとの主張も追加。だが、地裁は判決で、停止行為自体は危険行為に該当しないと判断した上で、死傷事故は妨害運転や直前停止行為などを一連の行為ととらえ、危険運転致死傷罪を適用した。
これに対し2審東京高裁は、裁判員との評議を経ずに裁判官だけで法令の適用に関する意見を述べたのは「越権行為」だと批判、審理を差し戻した。
結局、差し戻し審で地裁は、被告が故意に妨害したと認定。差し戻し前の判決と同様の表現で「(死傷事故は)妨害運転の危険が現実化した」と結論づけた。
今回の事故を受けて、自動車運転処罰法の不備が指摘され、令和2年7月に改正法が施行。走行中の車を妨害するため、前方で自分の車を止めて死傷事故を起こすことなども処罰対象となった。