今夏の参院選(22日公示、7月10日投開票予定)に日本維新の会から比例代表での出馬を表明した俳優で歌手の中条きよし氏(76)が6日、東京・千代田区の選挙事務所でスポーツ報知の取材に応じ、「政治家になるのが最後の夢かもしれないね」と選挙にかける思いを語った。「うそ」を言わない政治で、高齢者支援を公約に掲げる。(瀬戸 花音)
「出馬に迷いはなかった。一番迷ったのはどうやって女房に言うかだったよ」。松田聖子ら多くの著名人から贈られた胡蝶蘭(こちょうらん)に囲まれながら中条氏は笑った。「ところであれだけど、参院選に出るから」と、奥さんに伝えたのは表明会見1か月前の4月1日。「『ああ、エープリルフールでしょ』って全然信用してくれなかったんだよ」
1年ほど前に政治関係者と会って話したのを機に政治の世界に興味を持ったという。その後、日本維新の会の馬場伸幸共同代表に会い、「身を切る改革」に賛同した。政治家としてやりたいことには高齢者支援を挙げる。「いずれみんな高齢者になる。日本で裕福な暮らしをしてる高齢者が何人いるのか。大きい小さいはあっても若い頃税金は払ってるんですよ。年取ったら国がなんか保障してくれると思うじゃない。でも実際は年取ったらどんどん苦しくなるんだよね。僕らのような高齢者が普通でいいから幸せに暮らせるような社会になれば、若い人の負担も減らせる」
俳優として人気時代劇「必殺仕事人」シリーズの三味線屋の勇次で名をはせ、歌手としては1974年に発売した「うそ」が150万枚以上を売り上げたが、選挙期間中は公職選挙法により歌を歌うことは封印される。出馬に「後悔はない」といい「今は一生懸命頑張って選挙をやってみよう」と汗をかくが、芸能界への未練は「うーんまあ、あるか」。当選を果たし、国会議員となれば副業が可能だ。「土日は国会がないからディナーショーやって、新曲も出せばいいじゃない」と“二刀流”の展望も明かした。
中条はこの選挙への当選を「最後の夢」と位置づける。「いっぱい人がいるなかで、76歳の俺に『参院選に出ませんか』と言ってくるっていうのは、俺の運命なんだと思う。政治だから楽しいだけじゃダメだけど、やっぱり新しいことに挑戦できるのは楽しいよ」
キャッチコピーは「『うそ』を言わない政治」と「国民の恨み晴らします」。芸能界ではニヒルな二枚目で鳴らしたが、「馬場さんが笑った写真を載せてくださいよっていうから撮り直したんだよこれ。笑顔なんてらしくないよねえ」と選挙ポスターにまだ照れを見せていた。
◆中条 きよし(なかじょう・きよし)1946年3月4日、岐阜県生まれ。76歳。1973年、読売テレビ「全日本歌謡選手権」で10週勝ち抜きチャンピオンに。74年に発売した「うそ」が「第16回日本レコード大賞」の大衆賞を受賞。同年、「第25回NHK紅白歌合戦出場」に出場。テレビ朝日系「新・必殺仕事人」(81~82年)から4シリーズ、三味線屋の勇次役でレギュラー出演した。