2018年に富山市の富山中央署奥田交番で警察官が刺殺され、近くの市立奥田小で警備員が射殺された事件は26日で発生から4年を迎える。亡くなった警備員、中村信一さん(当時68歳)の妻が今月、市内で報道各社の取材に応じた。強盗殺人罪などに問われた元自衛官、島津慧大(けいた)被告(25)に向けて「私たちの苦しさ、悔しさ、悲しさを分かってほしい。彼にも苦しんでもらいたい」と現在の心境を語った。
島津被告の控訴審で名古屋高裁金沢支部は今年3月、無期懲役とした1審・富山地裁の裁判員裁判判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。一方、被告の弁護側は高裁判決を不服として最高裁に上告した。
「毎年6月は、意識せずともつらい記憶がよみがえる」。中村さんの妻は、事件発生当初の「憎い、悔しい、苦しい」という感情を、この4年間で少しずつ自分の内に収めることができるようになったという。「今はそれを彼(被告)に分かってほしいという思いが強くなりました」
事件を巡る裁判は長期化しているが、「被告には(事件について考える)時間が必要と思うようになった。その意味では裁判が長引くのは良かったのかな」。被告は1審で黙秘し、控訴審には出廷しなかった。差し戻し審が始まって出廷した場合は「何でもいいから自分の言葉で答えてほしい」と訴える。
裁判では、他者への共感力などが欠けているとされる「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の影響が指摘された。「今後、療育を受けることで、私たちの気持ちを理解できるようになれば、彼も自分のやったことを後悔し、苦しむだろう。10年後、20年後だろうと、いつか私たちの気持ちに応えてくれると信じている」
中村さんの妻は、県警の初動対応に問題があったとして島津被告と富山県に損害賠償を求める民事訴訟を起こしている。島津被告には今年3月、約2600万円の賠償命令が出され、県に対する訴訟は継続中だ。「同じような事件が起きた時に同じことを繰り返しては主人の死が無駄になる。(県警の対応が)おかしかったのなら、私が声を上げなければならない」と話した。
「4年前は(信一さんが)いなくなったという感覚の方が強かったが、最近は常に彼の存在を感じるようになりました。目には見えないけれど、ニコニコしながら『頑張れ』と言ってくれているような感じがします」。今年の命日は日曜日。信一さんをしのび、家族で一緒に過ごす予定だ。【萱原健一】