東日本大震災のような巨大災害では多くの人的被害とともに建築物、津波堆積物など膨大な災害廃棄物が発生する。これらの廃棄物処理が復旧・復興の工程に大きな影響を与える。今回は東日本大震災の経験を、南海トラフ地震、首都直下地震などへの備えに生かす取り組みを2回にわたって紹介する。
東日本大震災では、東北3県を中心として最大震度7の地震の揺れと最大約20メートルの津波に襲われた。
その結果、約13万棟の建物が全壊全焼するなどし、災害廃棄物量は、津波堆積物を含み13道県で計約3千万トンに達した。特に被害が集中した東北では、通常の能力では処理に10年以上を要すると推計された。こうした状況下で、政府は放射能の影響を受けた福島の一部地域をのぞき処理期間を3年と定めた。処理は、行政から委託を受けた全国の建設会社、地元企業などが行い、計画通り平成26年3月で完了した。
■管理システムを開発
東日本大震災の被災地での災害廃棄物処理では、廃棄物が1次仮置き場に運ばれた後、粗選別が行われ、2次仮置き場に搬送。ここで再利用できるものと処分するものに分けられ、それぞれ処理施設、処分場へと送られる。
岩手、宮城県で災害廃棄物処理を行った奥村組の技術本部技術戦略部環境技術担当部長、大塚義一さんは「被災地の住民の方々の理解と関係者の情報共有がスムーズに作業を進めるカギとなる」と振り返る。1次仮置き場に運ばれる前に、被災地で廃棄物がある程度分別されれば、全体の工程がよりスムーズになる。
また、廃棄物処理に関わるのは行政諸機関、建設会社、地元企業、廃棄物処理の専門家、各現場で作業にあたる1日数百~数千人の従事者など多数にのぼる。このため、毎日の進捗(しんちょく)状況をICT(情報通信技術)によって、誰もが共有できるようにクラウド化した「統合管理システム」を大塚さんらが開発した。
■南海トラフは3億トン
現在発生が懸念されている南海トラフ地震は、東日本大震災と同等の規模で発生した場合、環境省は災害廃棄物量を3億5千万トンと想定する。被災想定地域は都市部が多く産業集積地だけに、東日本大震災の約12倍にのぼる。
勝見武・京都大大学院地球環境学堂教授(地盤環境工学、産業廃棄物処理)は「廃棄物処理は復旧・復興の出発点で、工程に大きな影響を与える。円滑な運用のために情報共有は欠かせないが、その内容は多様な立場の人が理解、判断できなくてはならない。東日本大震災の経験は今後の災害に十分生かしうる」と指摘している。(編集委員 北村理)