安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった事件から一夜明けた9日、現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅北口ロータリー付近には献花台が設けられ、花束を抱えた人らが終日長い列をつくった。
午後5時すぎには、献花に訪れる人たちの列は300メートルほどになっていた。傘を差して30分ほど並んだ奈良市の大学4年の女子学生(22)は、白と紫色の花を手向けて涙を流した。「地元でこんな事件が起きてすごく残念。誰もが命を奪われることがないような世界をつくってほしいとの願いを込めて、投票に行きます」と話していた。
近くに住む介護福祉士の水本昭敏さん(59)は手を合わせ、「選挙中にこんなことが起きてしまったが、言論の自由を妨げることは許されない。明日は投票に行きたい」と語った。
8カ月の長男と訪れた奈良市の女性会社員(42)は、現場近くのデパートをよく利用しているといい、「生まれたばかりの子どもがいるので、日本で銃撃が起こるのはとても怖い。安心して暮らせる、自由に発言できる社会になってほしい」と花を手向けた。
同級生と一緒に訪れた同市の中学1年、八巻颯人(はやと)さん(12)は「今日は暑いので喉が渇くだろうと思って」とペットボトルを供えた。「どんな理由があっても銃で撃つことは許されない」と話した。
神奈川県藤沢市から来たという介護士の斉藤佳世さん(43)は「ニュースを見た息子がお花をあげたいと言うので深夜に車で出発した」という。息子の颯太さん(9)は「天国で安らかに眠ってほしい」と神妙な表情で手を合わせた。【川畑さおり、田畠広景、松室花実】