自民党の安倍晋三元首相(67)が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人容疑で送検された無職、山上徹也容疑者(41)が、母親が入信する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みを持っていたことに関連し、「安倍氏が(家庭連合の)友好団体にメッセージを寄せているのを見て、つながりがあると考えた」という趣旨の供述をしていることが12日、捜査関係者への取材で分かった。
安倍氏は昨年9月、家庭連合の友好団体「天宙平和連合」のイベントにビデオメッセージを寄せている。山上容疑者が安倍氏の殺害を決意したのは昨年秋ごろとみられ、奈良県警は、このビデオメッセージを閲覧したことが事件の引き金になった可能性があるとみて調べている。
捜査関係者によると、山上容疑者は「母親が旧統一教会に入信し、多額の寄付をして生活が困窮した」と恨みを募らせ、「当初は家庭連合のトップを狙っていた」と供述。そのために爆弾を作り始め、昨年春ごろには爆弾をやめて銃の製作を始めたという。
少なくとも1年以上にわたり武器の試作を重ねる中で、昨秋ごろに安倍氏に標的を切り替えたとみられ、同時期に行われたイベントでの安倍氏のビデオメッセージが計画変更に影響した可能性がある。
また県警は、事件前日の7日未明に、山上容疑者が奈良市内の家庭連合関連施設が入る建物に銃を試射したと供述していることに関連し、この建物の壁から複数の金属片を発見したことを明らかにした。金属片の中には丸みを帯びた弾丸のようなものもあり、鑑定して材質や銃の殺傷能力について調べる。
山上容疑者はこの日の夜、岡山市での安倍氏の演説会場に襲撃と試し撃ちに使ったものとは別の銃を持参していた。岡山の会場では安倍氏に近づけず襲撃を断念したと説明しているという。