容疑者の車内にアルミ箔巻いたトレー 銃の実包も自作か 安倍氏銃撃

安倍晋三元首相(67)が奈良市で銃撃されて死亡した事件で、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)が奈良県警の調べに「2月ごろまでに手製銃を完成させた」と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。また、山上容疑者の車の中からはアルミ箔(はく)を巻いたトレーが押収され、山上容疑者が「火薬を乾かすために使った」と話していることから、県警は銃に適合する実包も自作していた可能性があるとみている。
山上容疑者は、母親が宗教団体にのめり込んで破産したとして、この団体を憎み、当初は団体の最高幹部を襲撃しようとしたものの接触が難しかったことから団体と関わりがある安倍氏を狙ったと経緯を説明している。県警は、山上容疑者が団体幹部や団体と関わりのある要人について長期間、襲撃の機会を狙っていた可能性があるとみている。
宗教団体は韓国発祥の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。山上容疑者はこれまで「母親が団体に多額の献金をして破産し、団体を恨んでいた。安倍氏は団体とつながりがあると思った」と供述。事件に先立って奈良市内にある団体の関連施設付近で手製銃の試射をしたとも話している。
公安当局によると、山上容疑者が当初襲撃しようとした団体の最高幹部はこれまで何度も来日しているが新型コロナウイルスの影響などで往来が途絶えがちだったという。今年5~6月ごろに来日するとの情報が団体関係者の間で流れ、実際には別の幹部が来日したこともあったという。
山上容疑者は「最高幹部を狙っていたがコロナでだめになったので安倍氏を狙った」との趣旨の供述をしており、県警は襲撃対象を安倍氏に切り替えた時期について確認を急いでいる。
捜査関係者によると、山上容疑者が安倍氏の銃撃に使ったのは銃身の金属筒を二つ横に並べ、テープで巻いて固定した手製銃だった。銃身部分は約40センチで高さは約20センチ。山上容疑者は一つの筒から一度に6発を同時に発射できた、と説明している。また、この手製銃とは別に山上容疑者宅からはよく似た構造の手製銃とみられるもの5丁も押収されている。
山上容疑者は「爆弾も作っていたけど、これでは(人を)殺すことはできないと思って銃に変えた」とも話しており、県警は銃を密造する前に爆発物も製造していなかったか、調べを進めている。【林みづき、吉川雄飛、川畑岳志】