内閣支持率上昇、「安倍氏銃撃」影響か…野党は政権批判の受け皿になれず

読売新聞社の緊急全国世論調査で岸田内閣や自民党の支持率が上昇に転じ、政府は

安堵
(あんど)している。安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件が支持率に影響を与えた可能性がある。野党は政権批判の受け皿になれないまま、多党化が進む実態が浮き彫りになった。
「世論調査に表れた国民の声を

真摯
(しんし)に受け止め、政府としての対応に生かしていくことが重要だ」
松野官房長官は12日の記者会見で、世論調査の結果についてこう述べた。政府は物価高対策や防衛力の強化に引き続き全力で取り組む方針だ。首相周辺は、「参院選で勝って内閣支持率も持ち直し、これで一安心だ」と語った。自民党の世耕弘成参院幹事長も記者会見で「政治の安定が実現された。しっかり仕事をしてくれという期待の表れではないか」と手応えを示した。
岸田内閣の支持率は、6月下旬の前回調査で57%(前々回64%)に下落し、政府・与党内では、「物価高への不満が高まっている」との危機感が強かった。厳しさを増した政府への視線が安倍氏の銃撃事件で和らいだとの見方もある。
自民党の支持率は今回、岸田内閣発足以来、最高の44%に改善した。閣僚経験者は「首相への信任と安倍氏への同情が重なり、支持率を押し上げたのではないか」と分析した。
もっとも、首相にとっては、今後も正念場が続く。首相が優先的に取り組む物価高対策に特効薬はなく、食料品など価格がさらに上昇する恐れもあるためだ。防衛力の抜本的強化も、財源確保などを巡り、党内調整は難航が予想される。
一方、世論調査では、野党の支持率低迷も鮮明になった。
立憲民主党の泉代表は12日、国会内で記者団に「自民党1強だ。何とか野党の力を伸ばしていかなければいけない」と語った。
日本維新の会の藤田幹事長も「消極的な自民党支持はたくさんいると思うが、代わり得る選択肢にならなかった」と力不足を認めた。
参院選比例選で初の議席を得た参政党は、政党支持率で国民民主党や社民党を上回った。従来の野党が政権批判の受け皿になれないことが、野党の多党化を加速させている現状を裏付ける結果となった。