安倍晋三元首相が奈良市での参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、横浜市が市役所内に設置した記帳所に対して共産党横浜市議団(団長=荒木由美子市議)が中止を求める声明を出したことをめぐり、波紋が広がっている。会員制交流サイト(SNS)上では「行政がやる行為としては法的根拠がない」と中止要求に賛同する意見がある一方、「国に貢献した人を弔うのは当たり前」といった批判の声も上がるなど、賛否両論が沸き起こっている。
共産市議団長「公費使う以上は説明責任」
安倍元首相が死亡したことを受け、横浜市では11日から市役所1階ロビーに記帳所を開設(午前8時半~午後5時15分)。市役所職員1人を配置し、18日まで記帳を受け付けている。市によると、12、13日は200~300人が記帳したという。
今回の記帳所開設について共産党横浜市議団は、記帳所の設置と市役所職員配置の中止を求める団長声明を12日に発表。声明では「設置理由はあいまいであり、万人が納得できるものではありません。公平公正であるべき地方自治体のあり方に反するものと言わざるを得ません」と疑問を呈した。
団長を務める荒木市議は産経新聞の取材に「(横浜市が)どういうスタンスで記帳所を開設しているのかが不透明。公費を使う以上、(横浜市には)説明責任があるのではないか」と話した。
地元選出国会議員「民意大切にすべき」
今回の中止要求に、地元選出の国会議員も反応した。10日投開票の参院選で3選を果たした自民党の三原じゅん子参院議員(神奈川選挙区)は自らのツイッターに「設置理由があいまいと言うなら、その抗議理由こそあいまいだ! 何より市民の民意を大切にすべき」と投稿した。
SNS上では「記帳所を設けるなとはいわないけど、市庁舎に設置するのはおかしい」と中止要求に理解を示す意見がある一方、「元首相が理不尽に殺害されたことを、国民が悼んで何の問題があるのか」といった批判の意見もあった。
横浜市は産経新聞の取材に「人によって受け止め方は違うとは思うが、市民の弔意を受け取る場として設置した」(総務課)としており、予定通り18日まで記帳所を開設する。(浅野英介)