投票率の低迷 政治への関心をどう高めるか

多少、改善したとはいえ、半数近くの人が投票しなかった状況を軽視してはならない。政治参加をどう促すか、社会全体で考える必要がある。
参院選の投票率は52・05%で、3年前より3・25ポイント上昇した。
来春は統一地方選が予定されている。統一選の前年の参院選は、地方議員が活発に運動するため、投票率が高まる傾向にある。
投票日の2日前に、安倍晋三・元首相が銃撃され、亡くなったことで、投票権を行使しようと考えた人もいたのではないか。
それでも、今回の投票率は過去4番目に低い数字である。参院選では1989年を最後に、投票率が60%を超えたことがない。投票率の低迷は、民主主義の土台を揺るがしかねない。
投票率を向上させようと、各自治体は工夫を凝らした。商業施設などに設けた「共通投票所」は、前回の3倍となる143か所に増えた。動画配信サイトでは、タレントが投票を呼びかけた。
一方で、投票所は過疎地を中心に前回より約1000か所減り、4万6000か所となった。立会人の確保などが難しく、小規模の自治体にとっては、選挙事務が負担となっている。
お年寄りのために、投票箱を乗せた巡回バスを運行した自治体もあった。有権者の投票機会を狭めないよう、市町村は工夫を凝らしてもらいたい。政府は自治体の取り組みを後押しすべきだ。
都道府県別の投票率では、徳島県が2回連続で最下位だった。2016年から合区された徳島・高知、鳥取・島根の4県の投票率は、合区導入後、低下傾向にある。
「1票の格差」を是正するために導入された合区が、投票意欲をそいでいる面は否定できまい。与野党は、定数増による格差の縮小も視野に、選挙制度のあり方を議論することが重要だ。
総務省によると、18、19歳の投票率は34・49%だった。若者の政治離れに歯止めをかけたい。
明るい選挙推進協会が若者を対象に行った意識調査では、「投票する、しないは個人の自由だ」と考えている人が半数に上った。1票を投じても意味がないという無力感が広がっているのだろう。
高校生や大学生が、投票や意思決定の仕組みを学ぶ主権者教育を充実させることが不可欠だ。
住民票を移さずに実家を離れ、棄権する大学生もいる。不在者投票を利用できるが、投票用紙の郵送を求めるなど手続きは煩雑だ。簡素化を検討してはどうか。