「猛暑×コロナで地獄」医療従事者が語る“第7波”の壮絶現場

6月後半の記録的な猛暑が落ち着いたと思ったら、7月に入り、今度は新型コロナウイルスの陽性者が急増。東京都の7月18日の新規陽性者数は1万2696人と7日連続で1万人越え。1ヶ月前が東京都が約1600人、全国でも約2万人だったことを考えれば、新たな感染フェーズに入ったことは明らかだ。

実際、医療関係者はもとより、政府、自治体のトップも「第七波に入ったと考えられる」と認め、都が開いたモニタリング会議では、このまま推移すれば、来月前半には東京都だけで1日の新規陽性者数は5万人を超えると警鐘を鳴らしている。

◆「朝から晩まで電話が鳴りっぱなし」

再び医療機関の逼迫が危惧される事態となってきたが、医療現場の水際はどうなっているのか。

「ここ1週間、朝から晩まで訪問要請の電話が途切れることがありません。昨日(7月9日)は問い合わせを含め、約2000件の電話、メールがあったのに、実際に訪問できたのは約100件。ほぼすべてがコロナ感染が疑われる患者さんです。

うちのような訪問診療専門の業者に患者さんからの連絡が殺到するということは、裏を返せば、一般の病院がすでにコロナ陽性者や発熱者の診療を制限するなど、逼迫しつつあるということです」

◆すでにパンク寸前の状態

こう語るのは、ナイトドクター事務局の代表を務める菊地拓也氏(48)だ。同社は訪問診療専門の民間業者として1都3県に24時間体制で、患者宅に医師と看護師を派遣するサービスを行っているが、ここへ来てすでにパンク寸前の状態だという。

「ほんの1ヶ月前は、コロナ関連の患者さんからの問い合わせがほぼゼロという日もあり、事務局内には『やっとコロナも終息だな』という楽観ムードが漂っていました。6月半ばを過ぎると、猛暑の影響で、コロナよりも熱中症の患者さんが急増しましたが、今月に入って猛暑も落ち着き、やっとコロナや熱中症以外の病気や怪我をした患者さんへの対応が主になった。

それが本来の姿なので、我々も安堵していたのですが、1週間ほど前から突如として電話が鳴りっぱなしの状態になった。コロナ由来のものです。『ああ、また地獄の日々が始まるのか』と思いましたね」

◆激しい咽頭痛と40度近い高熱に注意

第7波は、オミクロン株の変異種のひとつで感染力が強いとされる「ba.5」が主流を占めているとされているが、これまでの波と症状などに違いはあるのだろうか。菊地氏は語る。

「まず感染力ですが、訪問要請の電話が毎日倍々ゲームで増えている状況を見ると、明らかに強いと考えられます。患者さんの症状で顕著なのは、激しい咽頭痛と40度近い高熱です。第6波でも咽頭痛を訴える患者さんは多かったのですが、数も症状の重さも今回のほうが上回っている印象を受けています。

咽頭痛の患者さんの多くが『今までに経験したことのないような激しい痛み』だと訴えており、食事や水の摂取もままならなくなる人も多い。こうなると、さらに体力を落として、回復が遅れるケースも。咽頭痛で口から水分が取れず、脱水症状となり、命にかかわるような状態になっていた患者さんもいました。注意が必要です」

◆コロナと熱中症の併発が増加する可能性も

今回の第7波には、もうひとつ大きな問題があるという。

「猛暑の夏に流行がはじまったという点です。こうなると、コロナと熱中症を併発するケースも多く、それが引き金となって重症化していく患者さんが今後増えていくと危惧しています。とくに今回は咽頭痛を訴える患者さんが多く、水分を取りにくい状態になるため、熱中症になりやすい。咽頭痛があっても、患者さんには無理やりにでも水分と塩分を取るようにしてほしいと思います」

真夏のコロナ禍は、患者だけでなく、医療従事者への負担も大きくなる。暑さとの戦いである。

「ドクターも看護師も、患者さん宅では防護服での診療となるので、非常に暑く、体力の消耗が激しい」

一般病院などの通常の医療現場を陰で支えている訪問診療のスタッフたち。彼らが倒れてしまったら、医療崩壊も現実のものとなってしまうだろう。それでも菊地氏はこう言う。

「我々にとっては地獄の夏になりそうですが、実はそれほど悲観的にはなっていません。というのも、第1波から第6波まで経験した我々には、すでに多くの知見とノウハウがあります。これまで通り、淡々と日々の診療をこなしていくだけですよ」

終わりの見えないコロナ禍は、いつまで続くのだろうか。

取材・文/根本直樹